
富士山人「Trekking Gellery」より
あけましておめでとうございます。
100年に1度の金融危機下ということが叫ばれています。
大変厳しい環境の中で新年を迎えることになりました。
原因は「金融派生商品」の名の下に信用をいたずらに膨張させ、バブルの中で膨大な利益を掠め取った欧米の金融資本の自制心のない暴走にありました。
それにしても、日本の政治はだらしがない。
一昨年の選挙で、民主党の農家に対するばらまき予算公約で破れた自民党。それを巻き返すために掲げたのが定額給付金。
将来の産業振興とイノベーションを見据えて、環境とか医療とかに思い切った先行投資をするのではなく、選挙見当ての後ろ向きの、予算のばらまき競争。
麻生総理や与謝野経済財政担当相だけでなく、小沢、鳩山、菅の民主党ご三家にも責任をとって辞めてもらいたいと懇願します。とても日本の将来を任せる気にはなりません。
そして昨年来、住宅業界を賑わせてきた唯一が「200年住宅」というのですから、本当に情けない。
皆さん。
選ばれた住宅が、「本当に200年の寿命を持っている」と思いますか?
温暖化でシロアリの被害の拡大が心配されていますが、大丈夫なのでしょうか?
結露や雨漏りで、構造駆体が腐朽化する心配は皆無なのでしょうか?
ヨーロッパではサッシの寿命は35年と言われているけど、日本のサッシや高性能ガラスは取り替えなくて200年も持つと本気で考えているのでしょうか?
第一に、Q値が一番優れた北方型エコで1.3W、それ以外はほとんどが1.9W以下の住宅ですから、200年どころか20年たったら断熱改修工事を行わないと住めなくなるのではないでしょうか?
そして、200年住宅であるということを誰が保証してくれるのでしょうか? 認定を受けた業者が保険会社とタイアップして200年の保証書を発行するのでしょうか? それとも、政府が責任を持って保証してくれるのでしょうか?
つまり、200年住宅というのは、耐震偽装に匹敵する「官製偽装」なのです。
いや、耐震偽装事件などとは桁違いに悪質な偽装。
その偽装を、どの報道機関も指摘し、糾弾しなかった。
このため、本来だったら厚顔無恥な人間でなければ絶対に口にしない「200年住宅」などというバカげた言葉が横行することになったのです。
世界の中で「200年住宅」という言葉を用いている国がありますか?
なぜ、日本だけがこんなバカ騒ぎをやっているのでしょうか?
これは政府がバカだということではなく、国交省から国民が大バカ扱いされているということではないでしょうか?
何回も書きますが「無暖房住宅」とか「ゼロエネルギーの家」というのも、同じく偽装以外の何ものでもありません。
スウェーデンの建築家のハンスさんが唱えたのは「温水によるセントラル輻射暖房装置がなくても住める住宅」でした。セントラル暖房設備にかかる費用で壁・天井の断熱を厚くし、高性能サッシと熱回収率の良い換気装置を導入する。しかし、この換気装置にはプレ・ヒーターが付いていた。電気で暖めた空気を導入するシステムを採用していた。
このため、ハンスさんは「無暖房住宅だ」とは一言も言っていません。それなのに、日本の心ない業者が、消費者の関心を惹くためにあえて「無暖房住宅」という言葉を用いて偽装を行ったのです。
無暖房住宅研究会という存在は許せます。どうすれば無暖房住宅が出来るかを研究することは悪いことではありません。しかし、無暖房でない住宅を「無暖房住宅」と名を付けて消費者に売ることは、明らかに偽装であり、羊頭狗肉のペテン行為。
同じことで、セキスイハイムの北海道のシェダンが「光熱費ゼロの家」と言っているのも、明らかな偽装です。灯油代が45円の時で、5kWの太陽光発電を搭載した場合の机上計算での数値。
500万円を投じて10kWの太陽光発電を搭載すれば、そこそこの性能住宅は光熱費を限りなくゼロに近づけることが出来ます。しかし、その住宅を「光熱費ゼロの家」と呼称することは、消費者を欺瞞することになるのではないでしょうか。
したがって、何人かの消費者から「セキスイハイムは信用出来ない」という声を聞きました。相手がハイムだから、その程度の信用喪失で済んでいます。
しかし、これが地場ビルダーだったらそれだけでは済まされません。
冬期の設定室温を18℃にし、夏期の設定温度を28℃でシミュレーションをしたら「無暖房無冷房であがった」と舞い上がり、「無暖房無冷房」で売り出したとしたら、とたんに訴訟問題に発展します。
消費者からの訴訟が如何に苦しいものであるかを、私は藤和時代にいやというほど味わいました。富士銀行から派遣された素人役員の無謀な計画と偽装で、自分の仕事の60%をクレーム処理に費やさねばならなかった苦痛。経営の根本を消費者志向に切り替え、本音で語りかけない限り、この苦しみから開放されることはありません。
消費者と直接繋がっていない団体の役員や大学の先生は、訴訟の対象にならないでから勝手なことが言えます。だが、ビルダーは訴訟の餌食になるだけでなく、地域社会からの信用を完全に失うことになりかねません。
ですから、心あるビルダーは「200年住宅」だとか「無暖房住宅」「光熱費ゼロ住宅」などという偽装表示は、絶対に避けるべきです。
そして今年、地場ビルダーがやらねばならない仕事は、建てた住宅の「暖冷房費・給湯費・換気費」の正しい燃費を表示してゆくことです。
ご案内と思いますが、EUは2006年1月に、全ての国で「当該住宅の年間燃費の表示を義務化してゆく」ということを決議しました。
その決議に基づいて、昨年7月からドイツで「エネルギー・パス」という名称でアパートや戸建て住宅の燃費表示を始めました。
今年からはイギリスが「住居のエナジー・レーテング」という名称で、スコットランドが「建築のエナジー・レーテング」、フランスがINES、イタリアがEALPという名称でそれぞれスタートするというふうに聞いています。その他のEU諸国も動き出すはず…。
呼称が各国まちまちなように、表示する内容も各国によって若干異なっているようです。
例えばドイツでは「暖冷房・給湯・換気」の二次エネルギーと全体の一次エネルギー、それとCO2kgを表示。これに対してイギリスやスコットランドは暖冷房・給湯・換気の他に照明の二次エネルギーを表示するようです。
そして、評価されるランキングもドイツの9段階に対してスコットランドは15段階という具合に、各国によって異なっており独自性を尊重しています。
しかし、いずれの国も暖冷房・給湯・換気の二次エネルギーと家電を含めた全体の一次エネルギー、CO2kgが表示するようです。
私どもは、今までR-2000住宅とかQ-1住宅、あるいはパッシブハウスという性能値で消費者にその性能を理解して欲しいと考え、努力をしてきました。
しかし、こんな暗号のような言葉では、燃費を消費者に正しく伝えることは出来ません。
やはり、EUに倣って、暖冷房・給湯・換気の二次エネルギー、家電を含めた全体の一次エネルギー、それとCO2kgを表示してゆくべきだと考えます。
本来は、これは国交省が音頭をとってやるべき仕事。
しかし、200年住宅などと世界に通用しない寝言を言いだし、大手プレハブメーカーのご機嫌ばかりをとっていて、周回遅れになった国交省に期待することはどだい無理。
何時になるか分かったものではありません。
そこで、R-2000住宅とかQ-1住宅、あるいはパッシブハウスという垣根を取り払って、全国の地場ビルダーが横断的に連携してヨーロッパの基準を正しく勉強し、エネルギー・コンサルタントの資格を取得し、世界の共通語で「当該住宅の年間燃費を表示してゆく運動」を、今年は進めるべきだと考えます。
そのヨーロッパの資料を日本的にアレンジし、有資格者による研修会を開催するにはかなりの時間がかかります。
主な諸団体の同意を得て進めるには、拙速であってはなりません。
十分に議論し、納得とコンセンサスを得てゆくことが不可欠。
この運動の基本的なコンセプトは「消費者に対して偽装的な性能表示を一切排除してゆく」ということです。
今年は、戸数を追いかけたり、やたらな投資を図る年ではありません。
消費者に対するビルダーとしての矜持を明確にし、消費者と共にその目的を確認し、着実に前進を図る年にしょうではありませんか。