2009年01月10日

PHIの目標値は日本の目標に相応しいか? (下)



パッシブハウス研究所のホームページに示されているグラフの、暖房15kWh/uaと多分給湯の6kWh/uaと、新規に追加される予定の冷房の15kWh/uaのいずれもが、二次電気エネルギー量ではなく、建物性能負荷だということがMiwaさんのリサーチで初めて明らかになった。
とたんに、私のような文系の人間はパニックってしまう。

図示されている換気の4kWh/uaと家電の11kWh/uaは、建物の負荷ではなく二次電気エネルギー量のはず?
異なる2つの単位が1つのグラフの中に同居しているということなのか?
それとも…。

私を含めた素人が一番分かり易いのが年間の電気代。
しかし、電気代の中の照明やテレビ、冷蔵庫、洗濯機、ドライヤーなど家電の電気使用量までは住宅屋がタッチ出来る訳がない。
また、IHヒーターなどの調理のエネルギー費もタッチ出来ない。
それに給湯費も家族構成の多寡によって変わる。u当たりという表示は、必ずしも妥当とは言えない。

電気代は国によって基本料金や単価が異なるから、国際比較する場合はやはりkWhかGJで表現する以外にないということになる。
そして、1万5000戸という累積実績戸数を誇るドイツのパッシブハウス研究所のkWhの数値が、必然的に基本的な参考数値となる。
面倒だが、やはりPHIの数値の検討からはじめなければならない。

まず、問題になるのが暖房負荷と冷房負荷。
北海道などの寒冷地は、暖房負荷の15kWh/uaのままで良いだろう。V地域からW地域にかけては、PHIが言うように暖房負荷15kWh/uaと冷房負荷15kWh/uaで計算すれば良いのか?
これに対してネットフォーラム上で異を唱えているのがhiroさん。
ヨーロッパでは冬期は雨期で加湿の必要性がない。また、夏期は乾期で空気が乾燥しており、日陰に入ると涼しい。日射遮蔽さえすれば、除湿の必要性がほとんどない。
つまり、顕熱だけを問題視すればよい。
これに対して日本の冬期は、とくに表日本はカラカラに乾燥する。風邪を防ぎ、静電気の発生を防ぐには加湿が必要。
そして、夏期は高温多湿で除湿が最大の課題になる。
したがって、日本の場合は「暖房顕熱負荷+暖房潜熱負荷(加湿)+冷房顕熱負荷+冷房潜熱負荷(除湿)の合計で45kWh/uaの負荷を標準にすべきだ」と提案している。

Miwaさんが鎌倉で計画中のプロジェクトの負荷計算をPHIのSさんに絶対湿度を12g/kgで計算してもらったら暖房負荷13kWh/uaに対して冷房負荷が15kWh/ua、そして除湿負荷はなんと25kWh/uaにもなったという。30kWhどころか53Whという大きな数値。もっとも絶対湿度を13g/kgとして計算すると除湿負荷は16kWh/uaで済む。
Hiroさんが提案する45kWh/uaに限りなく近い。
PHIの規定では除湿負荷は冷房負荷の中にも含まれておらず、特別な規定はないという。ただ、一次エネルギーの時にカウントするだけという。

このように見てくると、日本の場合は暖冷房・除加湿負荷が45kWh/uaというのが非常に妥当で、COP3の機種を用いると二次電気エネルギーは15kWh/uaとなる。
そして、この数値は部分空調や間欠運転、あるいは暖房温度を18℃に設定したものであってはならない。
冬期室温22℃、相対湿度40%以上。
夏期は室温28℃、相対湿度50%以下で全館24時間空調運転をする、ということが大前提での計算であるべきだと考える。

そして、換気は90%の熱回収能力があるものを365日間フル稼働させる。
この換気のリターンエアを除いた二次電気エネルギーが5kWh/ua。
つまり、「冷暖房・除加湿と換気で、20kWh/uaの二次エネルギーであげましょう」というのが、今年の私のホームページに掲げた提言。
私が考えだしたということではなく、皆さんのご意見をまとめたら、そういうことになったという次第。
この方が、パッシブハウス研究所の提案よりも日本にはフィットする。
そして、この数値はT地域からWb地域まで、共通して使えるのではないかと思う。

北海道は暖房と換気で15kWh/ua。
これを達成するためには旭川はQ値が0.5Wで、札幌はQ値が0.6W必要なのかもしれない。あるいは、Q値よりも蓄熱性能が求められるのかもしれない。
仙台や北関東のQ値は0.7Wから0.8Wが最適なのかもしれない。あまりQ値を上げると逆に冷房負荷が増えるかもしれない。そして、より日射遮蔽が問題になってくる。
東京以西では最適Q値が0.9Wから1.0W、あるいは1.1Wなのかもしれない。
そして、やたらとQ値を上げることが目的ではなく、除加湿を含めて最適Q値と蓄熱と日射遮蔽を求めるというのが、これからの競争の基本となってくる。

そしてT、U地域では、暖房設備のない住宅が登場してくるかもしれない。
熱回収換気で暖房設備を不要にしてゆく住宅。これこそがパッシブハウスと呼べる。
そして、地球の高温化(温暖化というおだやかな問題ではない)に伴ってより冷房設備が必要な地域が次第に拡大してゆく。
この冷房地域では、ますます重要性を帯びてくるのが除湿。Q値を高め、日射遮蔽を抑えてゆくと、冷房よりも除湿がよりウェィトを占めてくる。
何回も同じことを書いているので気がひけるが、相対湿度や絶対湿度が低いと、多くの人々は30℃であっても快適と感じる。
温度と相対湿度、絶対湿度と快適性の相関関係は下記。

  温度    相対湿度   絶対湿度
  26℃     60%     13.0g/kg    
  27℃     55%     12.5g/kg     
  28℃     50%     12.0g/kg     
  29℃     45%     11.5g/kg     
  30℃     40%     11.0g/kg
          
今までのクーラーの除湿運転に変わる、もっとアクティブな除湿機械の開発が求められている。
すでにビル用の大型のデシカが開発されている。
今までのデシカント除湿の最大の欠点は、吸湿した湿度をパージするときの電気ヒーターに大きな電気代がかかったこと。
これをヒートポンプに変えたら、効率は4倍になったと言われている。
新しい技術が誕生している。
しかし、日本の大手住宅メーカーは、家庭用デシカの開発をメーカーに求めていない。
このため設備機器メーカーは、個別エアコンのサララを売ることに精を出している。
技術はあっても、住宅メーカーが「セントラル除湿機械の開発」を求めないから、いつまでたっても開発されない。宝の持ち腐れ現象を起こしている真犯人は、大手プレハブメーカー。

日本に求められているのは「パッシブハウス」ではなく、積極的なイノベーションを求めている「セントラル除湿付きのアクティブハウス」なのかもしれない。
ともかくビルダーがやらねばならない仕事は、冷暖房・除加湿・換気で年間20kWh/uで上がる家造り。
当面は、この目的に集中したい。

そして、これ以外の家庭用の二次電気エネルギーとしては、hiroさんの当面の提案でほぼ良いのだと考える。
まず、給湯が11〜12kWh/ua。
深夜電力を使っているエコキュートの電気代は安い。月2000円以下。しかし、kWh/uaで見るならば、4人家族だと日本の場合は1500〜2500kWhも使っている。
つまり、関東以西では暖房費よりも給湯費の方が、小さな家ほど大きくなってくる。
本来は15kWh/uaとすべきだが、我慢をしてもらうことにしょう。
将来は太陽熱を組み込んだハイブリッド給湯に変えると、給湯エネルギーを半分にすることが出来る。しかし、深夜電力利用のエコキュートの料金が安いので、わざわざ設置費を投じて、メンテナンスが難しいハイブリッドを求める人は少なかろう。よほど政策的誘導策がない限り、日本での普及は難しい。

次は照明を含んだ家電。これが16〜17kWh/ua。
高性能家電の開発が進めば、これも将来はかなり少なくなってゆこう。

そして、調理が4kWh/ua。

これらを全部合計すると二次電力エネルギーが52〜54kWh/uaとなる。
したがって、一次電力エネルギーは140〜146kWh/ua。
この少ない方をとって私のホームページの当面の目標とした。
一次電力エネルギーがPHIの120kWh/uaよりも20%近く多いから、正式にパッシブハウスとして認定されることはない。
それでいいのだと思う。ドイツの生活に、窮屈な思いをして合わせる必要はことさらない。日本は日本の実態に合った目標を建て、それをクリアーすべく努力してゆくことが正しいのだと確信する。

そして、もう1つやらねばならないビルダーの仕事は、当該住宅の年間燃費を全ての消費者に公開してゆくこと。
昨年7月のドイツに続いて、今年からEUの多くの国々で、年間燃費の公表が義務づけられてくる。
これは、消費者にとっては非常に有難いシステム。
建てた住宅、あるいは借りようとしているアパートの年間燃費が、冷暖房を除けば標準的な水準表示に過ぎないが、全戸が表示され、格付けされる。
そのランキングを見て選択出来る。
今までいろんな住宅の性能表示制度があったが、これこそが消費者にとって究極の性能表示だと思う。

表示される二次電気エネルギーは冷暖房・除加湿・換気と給湯だけ。
イギリスではこれに照明が加わるようだが、日本は照明を除いた方が良いと思う。
そして、いきなり冷暖房・除加湿・換気と給湯の二次電気エネルギーが31〜32kWh/uaを目指さなくてもよい。

P1000795.JPG

上図のように、冷暖房・除加湿・換気と給湯が47kWh/uaというR-2000住宅並のものでも堂々と表示してゆく。
この47kWh/uaでも、9ランクに分類されたランクで最上の第1級のランクに分類される。プレハブの3級をはるかに引き離している。
エネルギー消費の面での差別化が出来、誰の目にもその優位性が明らかになる。
これに家電の18kWh/uaと調理の5kWh/uaが加わり、二次エネルギー合計が70kWh/uaだったとする。
この場合の一次エネルギーは189kWh/ua。
これをCO2排出量に換算すればいくらになるかは分からない。そのうち計算式が示されるだろう。仮に68.3kg/uaであったとすれば、それを公表してゆく。

本来、この仕事は政府が率先して行うべき仕事。しかし周回遅れの国交省と大手プレハブメーカーのモタモタに追随しているわけにはゆかない。
ドイツのDINなどのシステムを、日本の基準に準じたものに変更し、先進的なビルダー共有のシステムとして活用し、消費者にそれぞれの住宅のエネルギー性能を、世界の基準に沿って公表して行こうではありませんか、というのが私のメッセージ。
posted by unohideo at 10:01| Comment(0) | パッシブハウス(計画と現場) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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