2009年02月05日

やたらQ値を追うのは止めましょう!



皆さんも多分そうだろうと思う。
ゼロエネルギー・ハウスという呼称に、どうしても抵抗感がある。

もう10年前、オール電化住宅が登場したての頃。
R-2000住宅の60坪(約200u)の大きなオール電化住宅に入居された4〜5人家族の3つの世帯。いずれも几帳面に年間電気代を記録していただいた。
そのいずれもが、20万円から24万円に収まっていた。
もちろん全館24時間空調換気で、除加湿機能付き。
それまでの住んでいた住宅の広さは半分以下と狭く、冷暖房は個別エアコンの間欠運転。もちろんオール電化住宅ではなかった。
その小さな家に比べても、新居の電気代が安く、しかも超快適な生活環境に大変に感謝された。
今では、その半分以下の電気代が目標に。

さて、この60坪のR-2000住宅に、500万円近くを投資して10kWの太陽光発電を搭載したとすると、年間の売電は26万円を超える。
ということは、60坪のR-2000住宅3戸とも「ゼロエネルギー・ハウス」と呼んで良いことになる。
つまり、20年前のR-2000住宅の建築技術レベルでも、太陽光発電を60坪の家で10kW、40坪の家で7kWを搭載するだけでゼロエネルギー・ハウスに変身してしまう。
建築屋は何の努力をしなくてもいい。
施主が太陽光に投資するか否かにかかっている。
こんな他人任せの無責任な姿勢が、ゼロエネルギー・ハウスを唱える企業の背後に見え隠れしているように感じられる。

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太陽光発電には誰一人として反対しない。
今年から再度補助金が付くようになったが、償却には20年近くかかってしまう。
ドイツのように10年以内に償却できるという、特別価格での買電料金政策が用意されているわけではいない。
太陽光発電設備の寿命は何年なのだろうか。
20年前に、誰よりも早く太陽光を本格採用して、かなりの数を売った。
当時は、3kWでも補助金以外に200万円はかかった。
第一次オイルショックの後で、注文住宅では200万円の値引きが常識だった時代。
それを逆手にとって、「絶対に値引きをしない変わりに3kWの太陽光発電を無料で進呈します」 という作戦を展開したら、やたらに売れた。
シャープからは 「太陽光発電は高気密高断熱住宅にこそ相応しいことがわかった。基本戦略を教えてもらいました」 と、大変に感謝された。
しかし、補助金制度がネックになってきた。
合格すれば良いが、不合格だとオジャン。このため、受注が計画出来ない。それで、この無料作戦は2年間で打ち止めにせざるを得なかった。
その時売った太陽光発電が、20年たった現在、どうなっているだろうか?
残念ながら系統的な追跡調査をしていないので、実際の耐用年数は定かでない。

仮に耐用年数が20年とすると、償却を終わった途端に寿命ということになり、実際的なメリットが施主にはない。
これが10年で償却できるということであれば、残りの10年間の年間8万円から20万円の売電が嬉しいボーナスになる。
太陽光発電は 「地球に貢献している」 という施主の良心的な満足感以外に、日本では際だったメリットを実感しにくい。
その施主の良心の上に、「ゼロエネルギー・ハウス」 がオンブしているだけではなかろうか。
やはり、太陽光、エコキュート、有機ELなどにオンブするのではなく、建築屋は駆体そのものの断熱・気密性能と耐震、防結露技術で勝負すべきだと思う。

ということで、一昨年からパッシブハウスを追い求めた。
そして、Q値が0.8Wないしは0.7Wから0.5Wへと、より高い数値であればあるほど、より優れた性能住宅であるはずだという考えが、急性インフルエンザのように私をはじめとした一部の日本人に伝染した。
しかし、この考えにブレーキをかけてくれたのがhiroさん。

このhiro邸の詳細については、2008年の「今週の本音」欄のカテゴリ「冷暖房と除湿」を開いていただくと、8月5日から25日まで5回に亘って掲載されている。参考にしていただきたい。
大まかな内容は、まず立地は首都圏で、V地域に近いWa地域。
法定建築面積は138uだが、2階から小屋裏にかけての大きな吹き抜け空間があるので実質面積は160uと言って良い。
気密性能は漏気回数で0.33回/50pa(相当隙間面積0.2cm2/u)と、パッシブハウスの厳しい基準を上回っている。Q値は1.0Wで、μ値は0.025。
全館セントラル空調換気システムを採用している。

このhiro邸のもっとも優れている点は、自分で「温度とり」を購入し、2年間にわたって室内の温湿度をはじめとして使用エネルギー量、電気代、換気量などの記録を系統的、継続的に記録しているというところにあるのだが、それだけではない。
その造詣の深い理論大系に基づいて、自分が求める空気質と室内温湿度環境を完全にコントロールしているという点にある。
パッシブハウスクラスの住宅のデータ取りは、山下先生が何ヶ所で行っておられるが、それはどこまでもデータどり。
hiro邸のように、想定した温湿度が、想定内で稼働しているかしどうかを検証するという積極的な使い方は、住宅では初めてだと思う。

hiro邸の年間設定温度と相対湿度は下記。

冬 期  温度24.0℃±0.5℃  相対湿度40%±0.5%  空調制御
中間期  温度24〜28℃     相対湿度35%〜50%   空調送風のみ        
夏 期  温度27.5℃±0.5℃  相対湿度45%±0.5%  空調制御

この設定温度と設定湿度がすごい。
まず、冬期の設定温度が24.0℃で相対湿度が40%というのは、なかなか到達出来ない数値。一般的には22.0℃で40%がやっというところではなかろうか。この室温を24℃にまいで上げると35%に落ちてしまう。
冬期もさることながら、夏期の設定温度が27.5℃で、相対湿度が45%というのは、信じられない数値。これだと絶対湿度は10.5gという驚異的な数値。通常12.5gで十分に快適。
したがって、hiro邸の温湿度の設定条件は、一般の家庭に比べて贅沢過ぎると言える。
別な言葉で言えば、そのような贅沢過ぎるほどの室内環境が日本の家庭で実際にコントロールされ、実現されているという紛れもない事実が存在かするということ。
この実現性に注目していただきたい。
そして、注目すべきは設定温湿度がほぼ完璧に実施それているという点。
下の3枚のグラフの紫線が1階室温で、緑線が2階の室温。これがほとんど変化を見せていない。いかにも安定している。
また、夏のグラフを見ると梅雨時も理想的な相対湿度が保たれている。
まさに理想的な室内空間。

20080120冬_hiro.bmp

20080601春_hiro.bmp

20080803夏_hiro.bmp

グラフは昨年の温湿度測定図。上から冬期、春の中間期、夏期。
紫が1階の室温。緑が2階の室温。赤が外気温度。青が2階の相対湿度。
梅雨時でも相対湿度が50%を越えたのは一度だけで、見事にコントロールされているのが良くわかる。

この理想的な室内環境を得るために、一体どれだけの電気代がかかったか。
・暖房   15.3kWh/u
・冷房    9.0kWh/u
・換気    7.3kW/u
・給湯   15.3kWh/u
・合計   46.9kWh/u

さて、問題はこの各項目を如何にして小さくしてゆくかである。
hiro邸の温湿度の設定条件が厳しいので、これを一般並にするだけで暖冷房エネルギーは10%はセーブすることが出来よう。
そして、暖房費を小さくするためにはQ値を1.0Wから0.8W程度にまで上げるべきかもしれない。
しかし、そうなった場合、夏期の室温の上昇ということも考えねばならない。ドイツのように暖房のことだけを考えておればいいのは、日本では北海道のT地域しかない。
V地域からWa地域では、Q値はせいぜい0.7Wから1.0Wの範囲で考える方が、最も適切ではないかと考えられるようになってきた。
また、換気の熱回収率を90%以上に高めてゆくということも大切。
さらに、暖房効率を高めるためには、Q値もさることながら、より蓄熱に力をいれるべきだという意見にも耳を傾けてゆく必要がある。

冷房の中で大きな比重を占めるのは除湿運転。
室内温度を25℃に設定するだけで、ことが足れるほど日本の条件は甘くない。
Q値が0.9W以上の高性能住宅で夏期の設定温度を25℃に設定すると、ほとんど冷房運転が稼働せず、室内の相対湿度は70%を突破して結露現象を引き起こす。
次ぎにやらねばならないことは、日射遮蔽をより完全にしてゆくこと。
そして、夜間や中間期に窓からの放熱するシステム開発も考慮してゆく必要がある。
さらには、換気のバイパス機能も重要な役割を担ってくる。
最終的には、ヒートポンプによるデシカ除湿の開発に期待したい。

換気については、hiro邸では2台入っているが、スティーベルの顕熱交換機だとエネルギー効率が高い。こうした新しい商品を導入することで、かなり解決出来る。

給湯に関しては、V、W地域では当面エコキュートに頼らざるを得ず、そのCOP能力の改善を求めるしかない。しかし、将来的には太陽熱を利用したハイブリッド給湯の開発を求めてゆかねばならない。

このように見てくると、V、W地域における省エネ化は、寒冷地ドイツを真似して、やたらとQ値をあげてゆくことではないということが分かってくる。
日本では、除湿と冷房のことがあるので、空調設備を住宅から撤去してゆくことは絶対に出来ない。つまり、パッシブハウスはあり得ないということ。
Miwaさんが調査してくれたおかげで、パッシブハウス研究所を万能視する考えが間違っているということも良くわかってきた。

V地域からW地域の住宅の比率が90%も占める日本では、いたずらなQ値競争や一方的なドイツ崇拝主義をやめて、日本独自の駆体性能の技術体系と評価体系を、現実のデータを基に創造してゆかねばならない。
posted by unohideo at 10:30| Comment(0) | 技術・商品情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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