2009年02月25日

全国のビルダーを直撃する一条の“i-cube”



ツーバィフォー工法をオープンな形で日本へ導入することを目的に、私が本格的に住宅産業に携わってから40年近くになる。
ビルダー業に身を転じてから30年というところ。
当時は第一次オイルショックの直後で、住宅の着工量は現在とそれほど変わっていない。徹底的に冷え切っていた。
実績のない初期には、大手の営業マンの「あの会社は危ないですよ」との囁き作戦に翻弄された。しかし、実績が出来てきたら大手の囁き作戦はうあっという間に失効。

そして、耐震性をはじめとして耐火性、遮音性、耐久性、太陽光発電、R-2000住宅などの高気密・高断熱で、常にトップランナーの一人として仲間と一緒に走り続けてきた。
このため、途中から大手住宅メーカーを怖いと思ったことがない。
鉄骨プレハブは、敵とは考えなかった。
たしかに、大企業志向で凝り固まった消費者層が存在するのは事実。
それと物量作戦でかき回され、敵わないなと感じさせられた時もある。
だが、質では絶対に負けない。
モデルハウスで、しばらく雑談しながら良さを体感してもらう。
それから静かに説明すれば、ほとんどの消費者の賛同を得ることが出来た。

小回りが効き、絶対にウソを言わない地場ビルダーの設計力と現場力ほど強いものはない。
デザイン力をはじめとした技術が備わっておれば、価格で大手に負けるわけがない。
そして、大手メーカーと競合すれば、しめたと思った。
ほとんど「いただき」だったから…。
もっともミサワホームなど、最初から競合しないメーカーも多々あるにはあったが…。

そして、パッシブハウスやそれに準ずる先端的な商品開発でも、今まで大手メーカーを怖いとは感じたことはなかった。
R-2000住宅を日本へ導入する時、「設計・施工マニュアル」を製作する上で大変な苦労が待ちかまえていた。翻訳されたカナダのマニュアルには暖房のことしか書かれていない。冷房や除湿が問題になる東京以西ではほとんど使えない代物だった。
このため、カナダのマニュアルを全面的に書き換える必要があった。今から考えると不十分な点が多いが、当時は高断熱住宅の冷房効果のデータもなく、逆転結露に関する実験もやられていなかった。
三菱総研の協力を得て、通産省から補助金をもらって3棟の実験棟を建て、3千万円程度を個企業で持ち出して実験を行なわざるを得なかった。

同じことで、ドイツの寒冷地用のパッシブハウスの技術を日本へ持ってきても、残念ながらそのままでは使えない。
夏期が乾期のヨーロッパ。夏期が雨期で高温多湿の東京以西。
夏の室温を25℃に維持することは至っては簡単。年間5kWh/u以下のエネルギーで十分に賄える。そのような実測値が出ている。
だが、相対湿度を50%以下に維持するためのエネルギー費が問題。
やたらに熱損失係数を良くしても、冷房・除湿費とのバランスがとれない。
その最適なQ値が、未だに系統的に解明されていない。
hiroさんという特別に優れた施主といろいろ議論した結果、東京以西ではQ値が0.8Wから1.0W程度がベストではなかろうかとの、とりあえずの答を出している。
そのデータ取りを、どのようにやって検証したら良いのか…。誰にやってもらうか…。

その矢先のi-cubeの出現。
ご案内のように、昨年のハウス・オブ・ザ・イャー・イン・エレクトリックの大賞に選ばれたのが一条工務店の「夢の家」。Q値は1.16Wであった。
そして、この商品を引っさげて同社は札幌へ進出。
と同時に、手稲区にQ値0.76Wのi-cubeという商品の実験棟を建てたというニュースは聞いていた。
ところが、途中からこれに体験ハウスの機能を持たせ、昨年中に10棟程度の施工実績を上げていたという。寒冷地用の商品として、磨きをかけるのは良いことだというぐらいにしか私は捉えておらず、追跡調査をしていなかった。北海道住宅通信の追跡調査でi-cubeの実態が浮かび上がってきた。

i-cube外観.JPG

ところが、単に北海道にとどまらず、大阪など内地でもすでに数棟の施工実績があるという。
そして、その内地での実績を基に、今年のハウス・オブ・ザ・イャーに応募中と聞いた。その数棟の実績が認められれば、同社は昨年に引き続き連続してハウス・オブ・ザ・イャーの大賞に輝く可能性が高い。
ともかく、大手住宅メーカーの中では、今までハイムの北海道限定版のシェダンのQ値0.99Wが最高の数値。0.8Wを切る商品を開発するなどという発想は一切ない。
となれば、ハウス・オブ・ザ・イャーは一条の独壇場となる。
中堅メーカーで、このような性能追求型の企業が登壇してきたことは、非常に喜ばしい現象だと考え、心の底から拍手を送りたい。
同社のチャレンジがインパクトになって、モタモタしている大手メーカーの省エネに対する態度が一新されることを期待したい。

とはいえ、この寒冷地用に開発されたi-cube。
当然のことながら、北海道ではQ-1.0W運動の影が薄れてゆく。
トップランナーは、コンスタントに0.8Wを切ることが求められてくる。
しかも、リーズナブルな価格で。
一条は今まで木軸のメーカーだった。
しかし、下の図を見て貰えば分かるように、外壁は206、屋根・天井は210材に変えてきている。
つまり、ツーバィフォーによる大型パネルメーカーに変身している。
十勝2X4協会をはじめとした地場ビルダーに対する挑戦状だと考えるべき。
この挑戦状を突きつけられてへなへなするほど道の2X4仲間はヤワではない。
今年はタマホーム戦争とは比較にならないほどの高度な「技術イノベーション戦争」が開始されるのだ、と覚悟すべき。

i-cube外壁.JPG

そして、北関東以北のUおよびV地域でも、i-cubeの影響は日増しに強まってゆくであろう。
今までの突発的なゲリラ戦争ではなく、常戦状態になる。
一刻の猶予も許されない。
今までの固定概念を捨てて、必死で商品開発を進めなければならない。
単に性能面だけでなく、価格面で大きなプレッシャーが加わってくるから、よっぽどフンドシを締めてかからねばならない。
敵は今までの大手メーカーのような、平家のヤワなお武家様ではない。
とりあえず、下記の仕様をよく読んで、いろんな人の知恵を借りて、対抗策を立案していただきたい。

i-cube概要.pdf

さて、関東以西。
寒冷地用に開発されたi-cube。
関東以西の商品としては、あまりにも未完成品な商品だと私は思う。
ここまでQ値を上げなくても、やらねばならないことが一杯ある。
日射遮蔽を完全にし、除湿性能を高めなければならない。バイパス機能をより完全化することも必要。そして、東京以西で床暖房というのはおかしい。完全なセントラル空調換気システムにトライすべき。
でないと、快適性はそれほど高くはない。魅力が足りない。

しかし、東京以西でQ値0.76Wの性能が簡単に、しかも安価に入手出来るようになったと言うことは、消費者にとって朗報であり、魅力。
i-cubeを総合的に上回る商品を、地場ビルダーが何としてでも開発してゆかなければならない。
その場合の重要なポイント。
「それは、一条と同じ土俵で喧嘩をしない」ということ。

一条は、大手メーカーと異なり、やたらとアウトソーシングをしていない。
自社に多彩な生産ラインを持っている。
そこを見極めて戦略を立てない限り、一条の術策にはまってしまうことになる。それでは絶対に成功がおぼつかない。

今ほど、一条の得手と不得手をきっちり見抜く目が必要な時はない。
そして、日本で本当の「省エネ戦争」が勃発したのだと考えて頂きたい。
posted by unohideo at 10:17| Comment(0) | 経営 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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