2009年03月05日

4月から施行される改正省エネ法の余りにも淋しい内容

省エネ法は、1980年から約10年間隔で、過去3回改正されてきた。
1980年のいわゆる、旧省エネ法。
1992年の通称、新省エネ法。
1999年の、次世代省エネ法。
そして、2009年の今年は、21世紀を見据えての改正があってしかるべき。
日本の常識ある人は、すべてがそう感じているはず。

ちょうど3ヶ月前の12月の初旬に、ネット・フォーラム欄にhiroさんから「国交省の第3回省エネ基準小委員会の配布資料がwebに掲載されている」との書き込みがあった。
早速開いて、全資料をプリントアウト。
なんと14項目を全部プリントしたら200枚にもおよぶ膨大さ。
こうなると一人でやっているSOHOの悲しさ。この200枚の資料を読み下すだけの能力が備わっていない。現役だったら関係者や懇意の記者を食事に誘って教えてもらうのだが、資料の多さに圧倒され、そのまま放置していた。
このため、改正省エネに対して、私は間違えた認識を持っていた。
その間違った認識でいろいろ発言してきたことを、まず深くお詫び致します。

3ヶ月前にwebに掲載された資料は、大きく分けて3つにわかれていた。
(1) 150戸以上を分譲している業者のための新しく設定する基準
(2) 2000u以上の建築物にあった届け出義務を2000u未満に改訂する告示
(3) 4月1日から次世代省エネ基準を部分的改訂する公示案

この中で、私どもビルダーにとって関心があったのは(1)と(3)。
(1)の大規模分譲業者用に新設される基準で目立った点が2点。
●Q値がT、U地域で1.4W。  V、W、X地域で1.9W。
●省エネ地域基準がT地域とW地域が細分化され、Ta、Tb、U、V、Wa、Wb、X、Yの8区分に分けられたこと。
これを読んで私の早とちりが始まった。
まず、品確法が改正されるであろうと考えた。
ご案内のように、現在の品確法の省エネ基準は4等級しかない。
次世代基準が4等級。新省エネ基準が3等級。旧省エネ基準が2等級。
いまどき2等級の基準が存在すること自体、国家の犯罪行為という以外にない。

いわゆる200年住宅。
200年も先の省エネ事情に対応するためにはかなり難しい制約があると考えるのが普通。ところが次世代省エネ基準の4等級をクリアーしておれば、200年住宅として認定される。
消費者の皆さんはどう考えられますか。
たしかに補助金などが得られて嬉しいが、次世代省エネ基準は東京だとQ値が2.7Wというみすぼらしい性能。そして、耐震基準も2等級。つまりギリギリの基準法の1.25倍のものでしかない。中越地震の震度7、2500ガルの直下型が襲ってくれば、倒壊しないまでもかなりの被害が避けられない性能。
こんな性能のものを200年住宅として認可されるのですから、国交省を信用して下さいと言われても素直に出来ない。

私は、耐震性は1.5倍の3等級を最低条件にすべきだと思う。
そして、省エネ基準は、新しく5等級を設けて、T、U地域のQ値が1.4W。V、W、X地域のQ値が1.9Wが設定されるのだろうと考えていた。そして、これが200年住宅の最低条件になると…。
今までの10年間隔の省エネ基準の改正を考えると、これが最低の改正案であるべき。
ところがですよ…。
分譲業者用の高い基準を新設しながら、国交省は品確法を変える考えは、なさそう。つまり、省エネ性能は等級4止まりで打ち切り。
国民の住宅をより良い方向へ誘導する政策作りが国交省の仕事のはず。それが、多分大手プレハブメーカーと全建総連の反対でネグレクトされたのだと邪推せざるをえない。

こうしたチンタラムードの中にあって、北海道の「北方型エコ」は突出している。
大手分譲業者用のT、U地域のQ値1.4Wを先取りしただけでなく、それを上回り、限りなくR-2000住宅に近い1.3Wを、北海道の省エネ住宅の最低基準として機能させようと頑張っている。
この動きをつぶさに見てきたので、このようなドラスティックな改訂意欲が、(3)の今回の改正省エネの中のどこかに含まれているのだろうと、ないものねだりの期待をしてきた。
だが、その期待は見事に裏切られた。
次世代省エネ基準は、その性能基準をただの1ヶ所も上げることなく、何ヶ所かの手抜き工事を奨励し、ご案内のとおり気密性能に付いての書き込みを抹殺してしまった。一口に言うと改悪しかやっていない。

改正省エネ基準のポイントについては、新建ハウジングの2月28日付けの4〜5ページにわたる特集記事が参考になる。
基準策定委員の一人である北総研の鈴木大隆氏のインタビュー記事が掲載されている。この記事を全面的に紹介したいのだが、同社のホームページに掲載されていないので、残念ながら勝手に紹介するわけにはゆかない。関心のある向きは、同日付の新聞のコピーなどを取り寄せて欲しい。

まず、「次世代省エネ基準の主な改正点」は以下。
(1) 冬期の日射取得と夏期の日射遮蔽の計算を簡便化した。
(2) 相当隙間面積(C値)の基準を削除した。
(3) 換気に関する規定を削除した。
(4) 熱貫流率(K値)を国際的なU値に変更した。
(5) ユニットバス回りと玄関回りの軽微な手抜き、およびオーバーハング床の軽微な手抜き工事をみとめた。

これと併行して「設計施工指針の主な改正点」は以下。
(1) 断熱する部位の緩和。
(2) 断熱・防露の施工基準の削除。
(3) 気密の施工基準の削除。
(4) 開口部断熱規定の合理化。
(5) 開口部日射遮蔽仕様の簡素化。
(6) 換気計画、暖冷房・給湯計画、通風計画の削除。

この中で、一番問題になるのはC値基準を何故外す必要があったかということ。
私は、寒冷地2cm2、それ以外の5cm2というC値基準というのは、どこまでも鉄骨プレハブメーカーと全建総連に対する妥協数値であって、世界的に恥ずかしい数値であり、全面的に改定すべきであると提唱してきた。
まず、10パスカルでのC値表現は世界に通用しない。やはり国際基準である50パスカルでの漏気回数に改めるべき。そして1.5回/hとか2.0回/hにすべき。最低でも3.0回/hにすることが、責任ある技術者の取るべき行動だと思う。
そういった指針値は絶対に必要。

ところが、鈴木氏は撤去した理由として「気密性を高める目的は@漏気の低減 A壁内気流の流れ抑制 B結露の防止 C換気計画の実効性の担保、と言う目的があるが、その目的から逸脱して各工法間のC値競争になっており、意味のないものになっていた」を上げている。
良心的なビルダーは、鈴木氏の上げた4点の目的を正しく遂行するため、命がけで施工精度を維持してきている。氏の言うような意味のない競争はやっているのではない。これは、ビルダーを愚弄した発言だと言いたい。
といっても、別に鈴木氏に糾弾しようというわけではない。ただ、こんな言い訳が世界の建築界に通用するだろうか。ヨーロッパや北米の学者が聞いたらあきれるのではなかろうか。説得力を持つものとはお世辞にも言えない。

P1000956.JPG

「気密の書き込みが無くなったから、気密性がどうなっても良いといっているわけではない。気密工事の重要性は今までどおり大切だ」と、昨日のセミナーで支援機構の河田氏も強調していた。
ただ、「画一的な規制基準が、基準の簡素化・合理化によってなくなった」と理解すべきであり、「省エネ性能の実現・内部結露の防止・計画換気実現のために仕様書などを参考にして、高い気密性確保のために丁寧な施工が望まれる」と声を大にしていた。
また、等級4の適合を得るためには、防露対策として品確法で規定されることになっており、改訂省エネ基準から気密性が削除されたからといっても、気密性は幾重にも担保されていると弁護していた。

しかし、気密性が削除されたので、かつてあった乾燥材の使用規定がなくなっている。
そのほか、温熱関係の研究者だけで制度を作っており、日本の木質構造が間違った方向へ誘導されているという気がしてならない。
杉山英男先生のように林産と木質構造と建築に精通した研究者が居なくなった。
杉山先生が生きておられ、改正省エネ法を読まれたら、おそらく長嘆息されることは間違いない。
単に温熱環境の研究者だけでなく、木質構造の研究者や、金物工法で実績を上げてきている民間の技術者を巻き込んで、次世代の次の省エネ基準に合致する素晴らしい木構造建築を創造してほしいと、心の底から願望したい。
posted by unohideo at 13:15| Comment(0) | シンポジウム・講演 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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