2009年04月15日

省エネ住宅のトップランナー・一条工務店の挑戦状(上)



日本の省エネ住宅のトップランナーは、一昨年までは間違いなくセキスイハイムだった。
2005年の2月、同社は「シェダン」というQ値が0.99Wの北海道型の住宅を開発し、その年に60戸という輝かしい実績を上げた。

それまでは、Q値が1.2W〜1.4WのR-2000住宅が、日本における最高水準の住宅。
つまり5年前までは、日本の住宅の省エネ住宅のトップランナーは、R-2000住宅に携わっていたツーバィフォーの地場ビルダーだった。
北海道ではR-2000住宅に特化した札幌のよねくらホームをはじめとして、帯広の岡本建設、赤坂建設など数社、旭川のハウジングシステム等々の多くの企業が頑張っていた。
東北では、ドイツのデザインスタイルでR-2000住宅に特化した北洲ハウジングが、性能と実績戸数でその存在を轟かせていた。
関東では、これまたR-2000住宅に特化して卓越した現場力を持つマイスターハウスと、全戸セントラル空調換気システムのナイスハーティホームが圧倒的な技術力を誇っていた。
このように、省エネ住宅は地場ビルダーの専売品だと考えられていた。
そこへ、セキスイハイムが殴り込みをかけた。

基礎断熱で、ポリスチレンフォーム150mmでU値は0.3W。外壁は高性能グラスウールが220mmで0.2W。天井は同じく高性能グラスウール360mmで0.13W。
このシェダンの登場を契機に、北海道で鎌田先生を中心に「Q-1.0W運動」が起こったのはご存じの通り。しかし、このQ-1運動は、関東以西ではR-2000住宅よりかなり性能が低いものがまかり通っており、輪の拡がりの割にはインパクトと影響力が弱い。

そして、2007年から始まったハウスオブザイャー・イン・エレクトリック大賞は、当然のことながらセキスイハイムが受賞するはずであった。何しろQ値が0.99Wで、軽く120棟を越す実績を上げていて、当時としてはダントツの存在だった・・・。
ところが、ハイムにとって不幸なことは、東電が中心になっていたこともあって第一回の授賞対象からI地域が除外されてしまったこと。
その理由は、「イン・エレクトリックということで、I地域ではエコキュートのCOP性能が現時点では低すぎるので期待出来ない」というもの。
このため、漁夫の利を得たのが一条工務店とスウェーデンハウス。

さらに言うならば、弟二回からはI地域も対象になったのだから、昨年ハイムがシェダンで応募していたならば間違いなく大賞を授賞出来たはず。
その点で、一条に比べてハイムのツキのなさが惜しまれる。
しかし、トップランナーとしてハイムが果たした大きな役割と功績は、決して忘れてはならない。

ハイムがシェダンを発表した年に、スウェーデンのハンス氏の「暖房機のない住宅」が話題を集めた。日本全国で講演会を企画したNPO法人外断熱協が、この無暖房機住宅のことを「無暖房住宅」と訳して宣伝した。
これは同NPO法人の明らかなミステーク。なるべく早く訂正した方がよい。
ハンス氏のやったことは、ドイツのファイスト博士のパッシブハウスの技術をもじったものに過ぎない。プレヒーター付きの熱交換機を採用して、ヨーロッパで多用されてきた温水パネルヒーターを採用しなかっただけ。
つまり、「暖房機のない家」にすぎない。
氷点下の空気を導入すると、顕熱の熱交換機は凍って動かなくなる。
このため、電熱器で空気を強制的に暖めてから導入する。
ヒートポンプではない。単なる電熱器で・・・。
このため、電気代がやたらにかかる。
ハンス氏の指導で建てられた茅野の介護施設「桜ハウス玉川」の田代育夫専務は「プレヒーターは電気代がやたらに喰うので、なるべくCOPの良いエアコンを使うようにしている」と話していた。
当然のこと。
無暖房住宅というのはまさしく羊頭狗肉。

その羊頭狗肉の見本がサンワホーム。
昨年「無暖房住宅セミナー」を、関東を中心とした12都県で170回も開いている。
第二回のハウスオブザイヤーの大賞を受賞した今年、同じような羊頭狗肉のセミナーを開いたら、公取から「誇大広告」で刺されるのは必然。
すでに各社から地域開発センターや東電へタレコミ情報が入っている。
単にサンワホームが訴訟され、敗訴するだけなら自業自得。
しかし大賞をとった会社が誇大広告をやっていたとなると、ハウスオブザイヤー制度そのものの信頼性が問われることになる。ともかく東電が黙ってはいまい。

このような理由で、ハンス氏の無暖房器住宅は2001年に20数棟のタウンハウスが建てたが、その後はスウェーデンで1戸も建てられていない。
お呼びではない。
プレヒーターは、温水パネルヒーター住宅よりも燃費がかかる場合がある。ヨーロッパの地域暖房の温水パネルシステムのコストは、イニシアル、ランニングとも安い。
そして強調したいのは、R-2000住宅の時のように無暖房住宅に特化した地場ビルダーが未だに一社も誕生していないという事実。
サンワホームのように、片手間でいいかげんな姿勢で宣伝材料に使っている企業ばかり。
断言しても良い。
「サンワホームは、絶対に省エネ住宅のトップランナーにはなれない」と。

この傾向は、日本でパッシブハウスの開発に取り組んでいる企業にも時折見られる。
日本各地で、Q値が0.7Wを切る試行住宅の建設が盛ん。これは素晴らしい傾向。
ともかくPRを兼ねて、試験棟を1棟建てる。
だが、この程度のことは誰にでも出来る。猫も杓子もとは言わないが・・・。
特別に騒ぎ立てるほどの価値はない。
だが、基本的で地味な努力と研究をやらずに、一発目当てでは早晩行き詰まる。

トップランナーというのは、本腰を入れて特化する企業のことを指す。
ということは、一条工務店はi-cubeに本腰を入れているということ?

一条工務店というのは、大変に印象の薄い会社。
テレビやラジオで宣伝をしない。
みのもんた、ラサール石井、宇宙飛行士の毛利さんを使うなどという発想が全然ない。
新聞に全面広告を出したこともなければ、雑誌に出稿もしない。
したがってさっぱり目立たないし、話題になることがほとんどない。
どことなく泥臭く、田舎臭い会社・・・。
ほとんどの人が、そんな印象を同社に持っていると思う。

ところが調べてみると、住宅の販売戸数は7000を越えて7位。
売上高は2000億円を超えている。創業30年でこの成績。
平均受注坪単価は64万円だから、決して高い方ではない。
それで、経営内容は良い。本来だともっと騒がれてよい存在。
何しろ、免震工法では他社とはケタ違いの強みを発揮し、3000戸近い施工実績を誇っている。
展示場は全国に330ヶ所も持っている。
今年の受注実績は、大手プレハブ各社が対前年度比で20〜30%減で苦労しているのに、同社は対前年比でプラスが続いている。
それなのに、なぜこれほどまでに目立たないのか?

それは同社の工場がフィリピンにあって、ほとんどの日本人がその凄さを目にする機会がないからではなかろうか。
つまり、商社や下請け企業を通じて同社の動向を知らされることがない。
工場労働者が通う居酒屋での会話を介して、同社の実態が語られることもない。
日本の消費者や業界関係者が目にすることが出来るのは展示場のみ。
そしてそこに駐在している営業マンは、お世辞にもスマートとは言いかねる。
企業の源泉力が奈辺にあるかが、さっぱり分からない。

しかしこの一年間、同社の設計関係者と付き合っているうちに、同社はとんでもない会社だということがおぼろげながらに分かってきた。
フィリピンの工場を見ていないので確言出来ないが、その工場の規模はただごとではないらしい。ともかく歩いては動くことは出来ない。車でないと工場内を移動出来ないという。
社員の宿舎や食堂などの施設まで加えると、何万坪という規模になるらしい。
そして、メインの製材から乾燥、加工、防蟻ラインだけでなく、あらゆる住宅部品や設備の製造施設を持っている。
ほとんどの住宅メーカーは、アウトソーシングという美しい言葉で、すべて下請けに投げており、工場は単なるアッセンブル工場。それどころか、組立ラインの一角を下請け業者に任せているところもある。
もちろん、あらゆる部品、設備、建材は一切外部発注。

これに対して、一条工務店はいろんなものを内製化している。
最初に、PVCの押出材を買ってきてサッシを自家生産していることが分かった。
その次はダブルハニカムブラインドを積水化学から買っているのではなく、アメリカのメーカーから特許を買ってこれを内製しているということが判明。
それどころか真空断熱材も自家生産し、これをシステムバスの槽と蓋に使っている。そして、当然のことながら床暖房付きのシステムバスも自家生産。
こんな調子で、聞き出したら次から次へと内製品が出てくる。
木製建具はもちろん、階段をはじめとした造作材、システムキッチンや収納家具、洗面家具、本棚付きや物置付の出窓セット、下足ユニット、床暖房用の下地セットetc.

中でも面白いのはノルウェー式サウナセットと大型スクリーンセット。
そして極めつきは、床暖房をしても永久に変色しない和紙を編んだ畳セット。
これには呆れてしまった。
ともかく同社は、今までのプレハブメーカーの常識では考えられない会社。
徹底的に自社での「もの造り」にこだわっている異色中の異色企業。
そこいらのプレハブ工場とは資質とポリシーが全く異なる。
こうなれば、何が何でもフィリピン工場が見たくなってくる。
好奇心が疼いてならない・・・。

P1010225.JPG
写真は札幌・手稲区明日の風町に建てられたi-cube宿泊体験棟

その一条工務店から、どうした風の吹き回しか知らないが、「札幌のi-cubeの宿泊体験棟を案内しもいいですよ」とのメールがとどいた。
私が同社のイエスマンになるわけがない。
私に情報を公開するということは、同社の内部情報がオープンになるということ。
その覚悟のほどが知りたかったから、「私だけでなく仲間に参加を呼びかけて良いですか」と聞いた。断られてもともとで・・・。
ところがOKだという。
慌ててハウスオブザイヤーの特別賞を受けた仲間を中心に8人にメールを出したのが5日前。しかも一泊二日の旅。
あまりの突然なので、忙しいトップは時間がとれる訳がない。
内地の仲間で参加出来たのはたった1人。
しかし、セキスイハイムや北海道の仲間を含めて11人が参加した。

一条工務店は、単に「敵に塩を送ったのではない」と思う。
その本気振りをアピールしたかったのだと思う。
そしてその本気ぶりは、私にとっては想定外の、ものすごく強烈なものだった。
posted by unohideo at 16:05| Comment(0) | 住宅メーカー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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