2009年04月25日

一条工務店の挑戦状 ・ グローバル化の対抗策(下)



自分の経済知識のいい加減さに、我ながら呆れた。
GDPでは日本は2位。
1人当たりGDPでは北欧各国や産油国に抜かれて22位になったということは知っていた。だが、アジアではトップだと思っていた。
ところがシンガポールに抜かれて2位。
そのあとを香港、韓国、台湾、マレーシアが続く。

そして、いろんな政情不安はあったが、早くから民主化されていたフィリピンがそのすぐ後を追っていると考えていた。
ところが、資料を漁ってみると中国、タイ、インドネシアよりもフィリピンの1人当たりのGDPが下回っている。
多くの企業が安い賃金を求めて中国に進出した。そして、中国でのマーケット開拓に自信のない企業は、中国の賃金高騰からさらに安いベトナムなどへ逃避を始めている。
しかし、フィリピンへの移転は聞かない。

フィリピンは大小7000余の島からなる島国。人口は約8800万人。農林水産業に従事している人口が37%。
外国からの投資も少なく工業化が遅れている。1人当たりGDPは10年前に中国に抜かれ、やがてインドにも抜かれるであろう。フィリピンに行ったことがないので、それ以上の細かい実態は不明。
そのフィリピンに、一条工務店が何万坪かの土地を取得し、木材の製材から乾燥、加工、防蟻処理に至る一貫工場をはじめ、各種の建材、住宅部品や設備機器を内製化していることは書いた通り。
「工場は何万坪あるのですか」と聞いたら、「さあ。なにしろ車でないと工場内を移動することが出来ません・・・」との返事。良くわからないが、3万坪以上はありそう。
こうした工場のほかに、日本からの派遣社員の住宅や食堂、福祉施設、更にはフィリピン労働者用の食堂や福祉施設などもある

一条は上場していない。
非上場企業の会社四季報に800社の中の1社として一条のことが取り上げられているが、スペースが1/4ページと小さく、とおり一遍の情報しか掲載されていない。
フィリピンの何島の何市に、どれだけの規模の工場を持っているのかが分からない。同社のホームページを見ても、海外に工場を持っていることすら触れてない。
一時、工場の設備管理者を募集していた時、勤務先がフィリピンとあったのが唯一。
完全にお手上げ状態。
関心のある向きは、帝国データバンクから有料で資料を取り寄せて頂くしかない。

中国に比べて1人当たりGDPが70%くらいということは、それだけ貧しく、労賃が安いということだと思う。
それなのに、日本からの企業進出の話題をあまり聞かない。
良くわからないが、一条工務店はフィリピンにとっては最良の安定した職場の一つであり、憧れをもって迎えられているのだと推測する。
このように、競合企業が少なく、勤勉な労働力が簡単に、しかも安く得られるところから、同社は日本の企業から建材、部品、設備機器を仕入れるよりも、フィリピン工場で内製化した方が、はるかに安く入手出来ることを発見した。
それが、樹脂サッシから真空断熱材に至るまでの幅広い内製化になった。

P1010229.JPG
ダイキンに仕様書発注した90%熱回収の全熱交換。分配器は1m3単位でコントロール出来るものを自社開発。

P1010235.JPG
フィンランド式サウナユニット。18万円でオプション。

P1010316.JPG
主寝室の書棚付き出窓ユニット。ドアを閉めるとカーテン変わりに。

P1010240.JPG
拡声器を内包した大スクリーンユニット。19万円でオプション。

しかし、こうした建材、部品、設備機器の内製化だけでは、大手プレハブ各社に対して10%程度しか販価を下げることが出来なかった。地場ビルダー比10%高というところか・・・。
何しろ同社は全国に330ヶ所の展示場を持っている。展示場が多いということは営業マンの数も多いということ。
つまり売上げでは7番目なのに展示場の数が3番目ということは、営業にかかる固定経費が大きい。テレビや新聞などでの宣伝よりも、展示場で実物を見てもらう方が実質的な宣伝になり、効率的だと考えているのであろう。
ただ、このPR力の乏しさが同社を目立たなくしている。

そして、今までは木軸のプレカットが主力。
たしかに、同社の免震工法は、ダントツの実績を誇っているだけに、現場を見ていると楽しい。
しかし木構造は、進んだ他社の木軸壁工法に比べて筋違いなどを多用し、北側に4寸の柱が多く、工法的にはあまり感心出来ない。床のプラットフォーム化も遅れている。
現在の古めかしい木軸によるプレカットを前提にしていたのでは、工場生産化率に自ずと限界がある。
つまり、日本の高い大工さんに依存する部分が多すぎる。
したがって、同社の価格はそれほど高くはないが、決して安くはなかった。

しかし、i-cubeは構造体を一変させた。
外壁に206を使い、二階床や天井根太には210を使う枠組み壁工法。
これは、単に工法の変身を意味しているだけではない。
プレハブ化率を飛躍的に高めたという点に注目すべき。
つまり、断熱材を圧縮充填し、下地の構造用合板を張り、外断熱を取り付け、通気防水シートを施工し、サッシを取り付け、縦胴縁を入れて外装仕上げまで行う。
壁内に配線・配管を行って、内壁下地の石膏ボードを施工する。
壁として一体化するために、一部は現場施工となるが、幅3メートルまでの完全なパネル化をなし遂げた。

これを2週間以内に現場へ運び込み、丸2日間で屋根を葺きあげる。
ハイムやトヨタのユニット並のプレハブ化率と考えてよい。
つまり、安いフィリピンの労働力を最大限活用した住宅がi-cube。
50坪で、53万円という坪単価はここから得られた。
ハイムやトヨタよりも価格が安いのは、日本とフィリピンの賃金の差。
それが、如実に示されたということ。
いわゆるグローバル化そのもの。

住宅業界におけるグローバル化というと、今まで2つしかなかった。
1つは、アメリカ、カナダ、北欧からの「輸入住宅ブーム」。
この輸入住宅は、いずれも先進国からのもので労賃が高い国。
したがって、デザインとムードで売れたが、本格的な競争力を持っていなかった。
もう1つは、中国の合弁会社にサッシ、フロアー、建具、衛生陶器、石、タイルなどを安く作って、日本へ持ち込む方法。
これは、一部資材のグローバル化にすぎない。
中国で完全にパネル化した住宅を、日本へ持ち込むという本格的なグローバル化は見られなかった。

このため、日本の住宅企業は、とくに大手プレハブメーカーはグローバル化が叫ばれているのに日本国内だけを見て、お山の大将で威張り続けてきた。
ヨーロッパを中心に、駆体の省エネ化の一大イノベーションが世界で起こっているのに、国交省や一部のお抱え学者を懐柔し、われ関せずと傲慢な態度をとり続けてきた。
消費者を欺瞞する「外断熱」の誇大広告。それを咎めない公取。
そして、省エネ住宅とは「大陽光発電と燃料電池発電を装備すること」と建築会社としての責任を放棄し、臆面もなく問題点をスリ替えた全面広告の数々。
駆体のQ値が2.0Wさえ切っていない惨めな性能値。
日本の住宅メーカーは、良心の欠落を世界に曝して恥じなかった。

そこへ、Q値が0.76Wで、50坪で53万円という住宅の登場。
これは、大手プレハブメーカーにとってはまさしく「黒船」。
太平の安眠を貪っていたメーカーに対して号砲を轟かせたのがi-cube。
そういった意味で、今回の一条の行動を高く評価したい。
そして、当然のことながら大手プレハブだけではなく、地域のパワービルダーにも大きな影響力を与えてゆく。
もちろん、地場ビルダーも例外ではあり得ない。
今年から来年にかけて日本の住宅産業界は、トップランナー一条のi-cubeが提起したグローバル化を中心に急回転する。好むと好まざるとにかかわらず・・・。
パッシブハウスはメインテーマではなく、サブテーマになる。

さて、地場ビルダーはどう対処すべきか。
札幌で、パッシブハウスクラスの住宅に特化しょうとしているビルダーの嬉しい姿を散見した。
片手間ではなく、一条以上の性能と価格に特化するビルダーがこれから各地に誕生してくる。そして地場のトップランナーになってゆく。
そのことをもう少し詳しく書きたかったが紙数が尽きた。
稿を改めて検証したい。
posted by unohideo at 05:11| Comment(1) | 住宅メーカー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
サイト運営し始めた者なんですが、相互リンクしていただきたくて、コメントさせていただきました。
http://hikaku-lin.com/link/register.html
こちらより、相互リンクしていただけると嬉しいです。
まだまだ、未熟なサイトですが、少しずつコンテンツを充実させていきたいと思ってます。
突然、失礼しました。
iwsrYK7M
Posted by hikaku at 2009年04月25日 07:24
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。