2009年05月05日

北海道「3-0-3運動」・アースチューブの可能性 (上)



北海道無暖冷房住宅研究会(会長・北大繪内正道教授)では2年前より「3-0-3運動」を提唱し、かなりの成果を挙げてきている。
この「3-0-3運動」というのは、「平方メートル当たり暖房費を3リッター、冷房費を0リッター、給湯費を3リッターで上がる住宅造り」を目指す運動のこと。

本来、無暖冷房研であるならば、「0-0-3」であるべき。
それが、暖房費が3リッター/uというのだから、「暖房費ゼロ住宅という世界のトップを走る素晴らしい研究だ」と、お世辞を言うわけにはゆかない。設立時から、無暖房という呼称の紛らわしさは指摘してきた。
「無暖冷房住宅造りを研究する」ことは一向に構わない。研究し、試行することは自由。
しかし「3-0-3住宅」を「無暖冷房住宅」としてビルダーがチラシに書き込むことだけは絶対に避けるべき。
告訴されるのは「研究会」ではなく、どこまでも「地場ビルダー」。
「訴訟に要する費用と時間と、失われる信用はとてつもなく大きいですよ。当事者以外はそのリスクが分かっていませんよ」というのが、実務経験者の肉声・・・。

ドイツでは今から10年前に「3リッターハウス」が叫ばれていた。
それが、現在では3リッターを完全に卒業して、半分の「1.5リッター/u」で済む「パッシブハウス」がブームになっている。
それでも、ドイツではパッシブハウスのことを「暖房費ゼロ住宅」などとは絶対に言わない。暖房費をゼロにするには、建築コスト15%増程度のさらなる初期投資が不可欠。
それよりも、1.5リッターハウス(15kWh/u)の住宅の方が、費用対効果が高い。
したがって、賢明な消費者は「暖房費ゼロ住宅」には踊らされない。

3週間前に札幌を訪ねた折、研究会メンバーのビルダー2社に、完成と工事中の3つの現場を案内していただいた。
当然のことながら、最初に「3-0-3運動」の性能進捗状況を書くべき。
ところが、私の頭の中に焼き付いたのが大洋建設鏡原社長の「札幌では、20メートルの長さのアースチューブなら、原価19万円で出来ます」という言葉。
これは、北海道の戸建て住宅の省エネ化を考える場合の「キー・ポイント」になるのではないかと直感させられた。

アースチューブがどんなものであるかを、昨年ドイツで初めて目にした。
カナダやスウェーデンでは見なかった。
スウェーデンではほとんどが中高層住宅。新設される木造戸建ては「サマーハウス」と呼ばれる別荘需要と農家住宅しかない。
中高層住宅、サマーハウスではアースチューブは採用していない。
都市住宅は中高層の集合住宅が主体で、そのほとんどが地域暖房システムを採用している。ヨーテボリ市では地域暖房の普及率は85%と聞いた。
熱源は(1) 家庭からの廃棄物 (2) 下水の汚水処理熱 (3) 製油所などの排熱などで、残った15%が(4) 天然ガス、とのこと。

つまり、各家庭には安くお湯が供給されてくる。
それをシャワーや洗面などに使う一方、開口部の下部にパネルラジエーターを設置して輻射暖房として使う。
各室の開口部下部にパネルラジエーターがあるから、換気は第3種換気で良い。給気はパッコンよりもサッシからのものが増えてきており、排気は台所・浴室・トイレからダクトで強制排気。
このような地域暖房を大前提に、スウェーデンでは第3種換気が普及している。それなのに、地域暖房とパネルラジエーターが普及していない日本に、やたらに第3種換気を売り込もうとする一部業者の、偏った意見には腹立たしさを覚える。

そのスウェーデンでも、熱回収型の顕熱交換機が普及しはじめている。
しかし、スウェーデンの顕熱交には、原則的にプレヒーターが付いている。
某社の顕熱交換機をバラしてみたら、新鮮空気の取り入れ口にプレヒーターが、そして熱交換した空気を送る送風口にもアフターヒーターが付いていた。
もちろん結露を防ぐのが目的。
このヒーターはシーズ状の、単なる電熱器。
したがって、ヒートポンプよりもはるかに熱効率が悪い。

ヨーテボリ市のハンスさんのタウンハウス団地の「無暖房機住宅」にはこのプレヒーターが使われており、暖房代に匹敵する電気が消費されていた。ただ、パネルラジエーターが不要な分、イニシアルコストが削減されている。
この実態を知って、スウェーデンではその後、誰もこの無暖房機方式を採用していない。
騒いでいるのは、日本の無知なる「無暖房論者」だけ。
茅野市に建てられたQ値が0.6Wのパッシブハウスの介護施設。
延べ234坪と大きなRC造。
一年前、空調関係者と一緒に同施設を訪ね、田代専務に実態を教えてもらった。
エネルギー代はQ値が0.6Wと優れているため、今までの施設に比べて年間冷暖房費は500万円安くなったという。パッシブハウス仕様にするために余分にかかった費用が1500万円。ということは3年間余で元がとれるという勘定。
そして、冬期のエネルギー源として電灯など電気機器類からの放熱が51%。入居している老人や若い職員の発熱が12%。
そしてプレヒーターの電気代が37%というから馬鹿にならない。
このため2年目からは極寒期を除いて、プレヒーターを使わずに出来るだけヒートポンプエアコン暖房に切り替えているとのこと。
つまり、プレヒーター付きの熱交換システムは、省エネ性の面で問題が残る。

これに対して、ドイツやオーストリア製の90%という高熱回収型熱交にはプレヒーターが付いていない。
北海道のQ-1W住宅ビルダーが、スティーベル社の90%熱回収という顕熱交を採用したら結露がひどく、溶解している時間が長くて熱回収率は低くて使えなかった。このため、国産の全熱交に替えたという話を聞いた。
これは日本スティーベル社の平山所長が悪い。多分。
スティーベル社製のパッシブハウス用の顕熱交は、アースチューブを大前提に考案されている。それを、アースチューブを装置していないドイツよりも厳寒な北海道の住宅に売り込むこと自体が間違っている。
昨秋のドイツ調査報告で紹介したが、改めてドイツのアースチューブの実態を見てみることにしよう。

P1000045.JPG
庭の南側に設置されている冬期用の給気口。長さ30メートルのアースチューブに繋がっている。

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南面の壁際にあるのが夏期の給気口。そのまま顕熱交に入る。

P1000050.JPG
これが排気口。給気口とは別の、道路に面した東壁に位置している。

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太いダクトの中央に赤い切り替えダンバースイッチが見える。冬期は下から給気し、夏期はアースチューブ内の結露を防ぐために上から直接空気を入れる。

P1000065.JPG
これが地下室に置かれた90%以上熱回収する顕熱交。アースチューブで高温になるので結露の心配はない。しかし、念のために排水施設が付いていた。

ドイツの戸建て住宅は、ほとんどが地下室付き。このため3メートル近く堀って、そこに30メートルのアースチューブを施工する。このため、プレヒーターが不要。関東以西ではとても考えられない工事。
ところが、札幌では凍結深度の関係で、布基礎の下に上下水道の配管工事が行なわれるという。
つまり、基礎工事に先行して配管工事が行われる。したがって水道屋さんは大型の掘削機を持っていないと商売にならない。
その水道屋さんに、「19万円を払うから、ついでに20メートルのアースチューブを施工してくれ」と頼めば、簡単に施工してくれると鏡原社長。
したがって、北海道ではアースチューブといっても、驚くほど原価は高くならない。
ただ、今まで冬期用と夏期用の2つの給気口を設けて、切り替えダンバーを付けるなどという発想がなかった。
また、20メートル長が常識で、ドイツのように30メートル長が必要だという規定がなかった。ドイツでは30メートル長が必要だというのには、何らかの理論的根拠があるはずだと思う。
つまり、北海道のアースチューブは、怒られるかもしれないが実験的な経験値しか持っていない。これに対して、ドイツの30メートルは科学的な根拠を持っている・・・。

鏡原社長の経験によると、20メートルでも7℃近い高温が得られるという。その高温を顕熱交へ入れるのではなく、現在は床下の土間空間に入れ、蓄暖で温めて各室へ上昇気流を利用して供給している。
つまり、アースチューブシステムとしては、かなり中途半端な方法でしか北海道では実験され、採用されてこなかった・・・。
これが、20年以上も前から本格的な開発がなされ、改良に改良を重ねてきたパッシブハウス研究所を中心とした顕熱交のシステムとドッキングさせると、かなり大幅な省エネが可能になるはずだと思うのだが・・・?

これは、ど素人の単なる思いつきかもしれない。
しかし、検討してみる価値はあると思う・・・。

posted by unohideo at 05:44| Comment(0) | 技術・商品情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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