2009年06月08日

網羅しすぎてピンボケ・木構造讃歌の理論大系

9日早朝から11日まで出張。
このため今回は、早めにアップします。


有馬孝禮著「なぜ、いま 木の建築なのか」(学芸出版社 2000円+税)

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ご存じのとおり杉山英男先生のあとを継いで、林産は有馬先生、木構造建築は坂本功先生という時代が続いた。有馬先生は安藤直人先生の前任者。
木軸だけではなく、ツーバィフォーにも識見が深い。
そしていち早く、若い森林はCO2を吸収してくれるだけでなく、木造住宅はCO2を固定していてくれている「都市の森である」と唱えた。
日本におけるCO2問題の先駆者。
現在は宮崎県木材利用技術センター所長として活躍される一方、2ヘクタールの山林を5年前に購入し、自らスギの植林を始め、高尚で贅沢な「山いじり」という趣味にも励んでいる。

先生の久々の力作に、木構造のおさらいをしながら楽しく読ませていただいた。
しかし、あまりにも内容が多岐に亘っていて盛り沢山。
そのため、焦点がぼけているのが残念。
テーマの「なぜ、いま 木構造建築なのか」について、グサリと胸に響かない。

林産や木質構造の先生に叫んで頂きたいのは、CO2もさることながら省エネ性能。
「木構造建築は、どの構造よりも断熱・気密工事が確実に担保出来、安価に省エネ化が図れて非常に経済的。しかも結露問題に留意し、構造材を厚くすればかなりの長寿命化も可能。あの木骨土壁造のドイツで、近年になって木構造住宅が急速に普及してきているのは、断熱性能の良さが認識されてきたから・・・。したがって、これからはパッシブハウスに匹敵する性能を持つ木造建築に対する正しい理解と認識を、如何に消費者に広めてゆくかが大切だ」と。

その断熱・気密性能と耐震性にピンポイントを当て、そのニーズに応えるため林産業や製材業界はどう脱皮してゆくべきか。
本当の200年住宅をコンスタントに提供するには、ビルダーを中心とした住宅業者はどのような形で責任を果たしてゆくべきか。
高性能サッシや熱回収率の高い換気システムの果たす役割が大きく、その分野へどうして新規参入業者を呼び込んでゆくか。
消費者はどんな心構えで木構造住宅を選んで行くべきか。
などを具体的に論じて欲しかった。
有馬先生ともあろう著者が、この肝心な視点を外している。
それが、いかにも残念。

この著書は6章から成っている。
1章と2章は、日本のスギの特徴と木の強度について学問的に記述している。
しかし、消費者の関心事の (1) 花粉症をまき散らしているスギ中心の今までの林業行政への疑問 (2) 傾斜地や高地にまで自然林の広葉樹を伐ってスギを植林し、動物が棲めない山にし、しかも放置したままでいる林業関係者の責任 (3) 細分化された私有地が荒廃している日本の山林への根本的解決策、などには触れられていない。
また、地場ビルダーが痛感している、(4) 集約化されていなく、互換性が乏しくて使いづらい地場スギ (5) 圧縮スギで強度のある家具や床材の開発が一部で進められているが、一般に温暖低地のスギは強度不足で使いたくない、という疑問に分かり易く答えていない。

3章は含水率、4章はストックとしての木造、5章は木材の加工度を取り上げている。
木材の含水率、およびTJIや集成材などのエンジニアウッドが日本で問題にされたのは、北米からプラットフォーム工法がオープンな形で導入されてから・・・。
それまでの日本の住宅では、時間をかけて天然乾燥させてはいたが、木材の含水率がそれほど問題にされてこなかった。
神社仏閣はともかくとして、個人の住宅に用いられる構造材の乾燥度は25%以上のものがほとんどだった。木口から割れが入り、木材が歪み、捻れるのは避けられない現象だと考えられてきた。あまり柱が歪では困るので、背割りをして吸収した。

昔は、それでなんとか凌げた。隙間だらけの家が当たり前で、人々はコタツや火鉢などの局所暖房で我慢をした。
ところが、アルミサッシが導入され、石油ストーブの時代から全館24時間空調の時代になって、含水率の高い木材の狂いが、ビルダーへのクレームという形で急襲し始めた。
建具の建て付けの悪さなどはかわせるが、サイデングの張り替えやボードの取り替えまで求められるようになってきてはお手上げ。
ビルダーにとっては、乾燥材を採用する以外にクレームから身を守ることができなくなった。
(以下に標示した図は、いずれも著書の中のものをトレースしたもの。本文は白黒だがわかり易いようにとカラーにした)

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こうして、上図のように15年前は木軸の柱材でたった4%の比重しか占めていなかった集
成柱が03年の段階で50%を占めている。現在では60〜70%以上に達しているものと推定される。
一方で、無垢の柱材の乾燥化も進んできている。
あのタマホームの現場を調べてみたら、柱は4寸角。間柱はその2つ割で、共に含水率は10%前後と人工乾燥材だった。
川西材を謳い文句にしている地産地消の製材工場を見たことがある。
ズブズブの材が加工され、出荷されていた。こんな材を使ったのでは、いかなる匠といえどもタマホームに勝てない。クレームで負けてしまう。
狂わない木を提供することが、世界的に製材業者にとっては最低の義務になってきている。そのことをもっと強調すべきと痛感する。


そして、木軸だけではなくツーバィフォー工法にまで大きな影響を与えてきているのが上図のプレカット化。
この図では、羽子板ボルトを使ったプレカットと剛接合の金物工法によるプレカットが混在している。従来の大工がやっていたホゾ、ミゾ加工を機械加工に置き換えただけの羽子板ボルト使用のプレカットは、耐震性で問題がある。
これからのプレカットは、門型ラーメンを含めてすべて金物工法でありたい。
その辺りの解説も、不足していると思う。
しかし、図を見れば5年前の04年でプレカット化率が60%にも及んでいる。
この調子だと、今年は80%近くになっているのではなかろうか。
ツーバィフォーと木質パネル工法の比率が20%と仮定すると、大工さん刻みはたった2〜3%という勘定になる。
数寄屋造以外は、CAD,CAMの金物と集成材や乾燥材によるプレカットになるだろう。
そして外壁に面材を使うことで耐震性が飛躍的に高められる。
このプレカットは消費者のためになる。そのことも、もっと強調する必要がある。

この木軸のプレカット化の進化が、ツーバィフォーのパネル化を促し、それが外壁パネルの一体化を損ねるという大問題が発生中。残念ながら著者はそれほど現場に明るくなく、そうした指摘もない。

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こうして、上図のように15年前は木軸の柱材でたった4%の比重しか占めていなかった集
成柱が03年の段階で50%を占めている。現在では60〜70%以上に達しているものと推定される。
一方で、無垢の柱材の乾燥化も進んできている。
あのタマホームの現場を調べてみたら、柱は4寸角。間柱はその2つ割で、共に含水率は10%前後と人工乾燥材だった。
川西材を謳い文句にしている地産地消の製材工場を見たことがある。
ズブズブの材が加工され、出荷されていた。こんな材を使ったのでは、いかなる匠といえどもタマホームに勝てない。クレームで負けてしまう。
狂わない木を提供することが、世界的に製材業者にとっては最低の義務になってきている。そのことをもっと強調すべきと痛感する。

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そして、木軸だけではなくツーバィフォー工法にまで大きな影響を与えてきているのが上図のプレカット化。
この図では、羽子板ボルトを使ったプレカットと剛接合の金物工法によるプレカットが混在している。従来の大工がやっていたホゾ、ミゾ加工を機械加工に置き換えただけの羽子板ボルト使用のプレカットは、耐震性で問題がある。
これからのプレカットは、門型ラーメンを含めてすべて金物工法でありたい。
その辺りの解説も、不足していると思う。
しかし、図を見れば5年前の04年でプレカット化率が60%にも及んでいる。
この調子だと、今年は80%近くになっているのではなかろうか。
ツーバィフォーと木質パネル工法の比率が20%と仮定すると、大工さん刻みはたった2〜3%という勘定になる。
数寄屋造以外は、CAD,CAMの金物と集成材や乾燥材によるプレカットになるだろう。
そして外壁に面材を使うことで耐震性が飛躍的に高められる。
このプレカットは消費者のためになる。そのことも、もっと強調する必要がある。

この木軸のプレカット化の進化が、ツーバィフォーのパネル化を促し、それが外壁パネルの一体化を損ねるという大問題が発生中。残念ながら著者はそれほど現場に明るくなく、そうした指摘もない。

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そして、5章と6章では、循環型の社会の在り方と地球温暖化対策としての森林、木材、木造を述べている。
これらについては、あまりにも多くのことが語られている。
したがって、上の表だけを参考までに掲載させていただき、あとは省略したい。
ただ、先生の発言で1つだけ目新しい点があった。

バイオマスエネルギーが注目されている。バイオマスは大気中のCO2を太陽エネルギーの光合成によって変換した炭素資源。したがって、それを燃焼してももとのCO2に戻るだけだから炭素収支はゼロ。いわゆるカーボンニュートラルだという。
しかし、時間をとり除いた見方をすれば、化石燃料とて同じこと。大昔の太陽エネルギーで出来た資源で、燃せばもとに戻っただけということになる。片方がCO2の放出がゼロとして扱われ、片方がカウントされるのは本来的におかしい。
この両者に差があるとすれば、次の2点があげられる。
1つは、バイオマスは再生可能な資源であるのに対して、化石燃料は再生が不可能だという点。
もう1つは、森林がCO2の放出を負担しており、木材の中の炭素に関してはカウントする必要がない。つまり、木材として長期に使えば使うほどプラスアルファとなる、と書かれている。
この指摘からすれば、既存木造住宅の戸数が多い国ほど、優遇されなければならないということになるのだが・・・。

有馬先生の著書の内容を紹介するというよりは、自分の考えを述べる方が多くなってしまった。
先生の現在の立場では、なかなか書きたくても書けないことがあり、学術的な記述にとどめられた点が多いと勝手に推定する。
そして、一方的に自分の考えを述べた点についても、先生は許してくださるはずだと、これまた勝手に身贔屓な解釈をしている。
そして、5章と6章では、循環型の社会の在り方と地球温暖化対策としての森林、木材、木造を述べている。
これらについては、あまりにも多くのことが語られている。
したがって、上の表だけを参考までに掲載させていただき、あとは省略したい。
ただ、先生の発言で1つだけ目新しい点があった。

バイオマスエネルギーが注目されている。バイオマスは大気中のCO2を太陽エネルギーの光合成によって変換した炭素資源。したがって、それを燃焼してももとのCO2に戻るだけだから炭素収支はゼロ。いわゆるカーボンニュートラルだという。
しかし、時間をとり除いた見方をすれば、化石燃料とて同じこと。大昔の太陽エネルギーで出来た資源で、燃せばもとに戻っただけということになる。片方がCO2の放出がゼロとして扱われ、片方がカウントされるのは本来的におかしい。
この両者に差があるとすれば、次の2点があげられる。
1つは、バイオマスは再生可能な資源であるのに対して、化石燃料は再生が不可能だという点。
もう1つは、森林がCO2の放出を負担しており、木材の中の炭素に関してはカウントする必要がない。つまり、木材として長期に使えば使うほどプラスアルファとなる、と書かれている。
この指摘からすれば、既存木造住宅の戸数が多い国ほど、優遇されなければならないということになるのだが・・・。

有馬先生の著書の内容を紹介するというよりは、自分の考えを述べる方が多くなってしまった。
先生の現在の立場では、なかなか書きたくても書けないことがあり、学術的な記述にとどめられた点が多いと勝手に推定する。
そして、一方的に自分の考えを述べた点についても、先生は許してくださるはずだと、これまた勝手に身贔屓な解釈をしている。


posted by unohideo at 23:06| Comment(0) | 木質構造と林業・加工業 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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