2010年01月20日

206充填断熱材+外断熱の結露対策



先週、日本の準パッシブハウスと呼ばれるものの断面を調べていたら、ほとんどがR-2000住宅の206充填断熱材+外断熱であることが判りました。
いまさらながらではありますが、i-cubeが206材を採用したのが大きい。

ところでR-2000住宅の時は、どのような断熱材を使い、気密性確保と結露対策をしていたか?
初期の設計・施工マニュアルには、3種類の断熱材と結露対策が用意していました。
(1) BIBの吹き込みを含めたグラスウール、またはロックウール断熱材。へバーバリアは内側石膏ボードの裏側に、床・天井の際までも含めて全面的に施工。
沖縄などを除いては、夏期の逆転結露の懸念はあるが、被害は決定的なものにはならないという判断を、坂本先生が下した。(もちろん当時の中心ビルダーは、無条件で坂本理論に同意したわけではありません。各社が行った逆転結露の実態調査から、問題視するような結露現象が、関東以北では起こっていないという事実を確認したからです)
(2) 現場発泡ウレタン。壁と床面との隙間は各社で工夫。べバーバリア不要。
(3) 204の壁に繊維系断熱材を充填。そして、石膏ボードの裏に硬質ウレタンを貼ったダブルボードを外壁全面に採用。

この(3)は、ほとんど採用されることはなかった。
当時の2X4協会梶山専務理事が、R-2000住宅の夏期の逆転結露のことを痛く心配し、責任を持って対策を用意するようにと命令され、あわてました。
急いで、当時の勤務先の会社で試験採用をしてみました。
一番手こずったのがコンセント、スイッチボックス周りの気密性能の確保。やっとこクリアーして、マニュアルに書き加えました。
窮余の一策。
したがって、R-2000住宅の場合は、(1)、(2) の範疇がほとんどだったと言って良い。
ところが、これに外断熱が加わるようになって、話がややこしくなってきています。

一番安直に採用されているのは、内側にべバーバリアを施した繊維系の充填断熱材だけでは断熱性能が不足している場合。
プラス外断熱として、薄いネオマフォーム、あるいはキューワンボードを施工する。
これだと、壁内に漏れた湿気は両側からサンドイッチ状態になって抜けない。
すぐには問題が起きないかも知れないが、こんな現場を見かける度に、背筋が寒くなってきます。
ネオマとかキューワンを販売する方で、きちんとした施工指導をしないと、これが原因で結露が発生した場合は、その責任のほとんどがメーカー側にもあることを自覚していただきたいと思います。

この湿気のサンドイッチ現象を嫌って、冬期には湿度を壁内へ入れず、夏期には壁内の湿気を室内側へ吐き出す 「インテロ」 をべバーバリアとして採用したのがグリーン・エコ。
このインテロを、木の繊維でも標準仕様とするようです。
ドイツの流通価格に比べて日本でのインテロはかなり割高なのが難点ですが、壁内結露を減らす資材としては注目されます。
ビルダーの中には、ドイツの販売店からまとめ買いしようとする動きもあります。

森さんの鎌倉の家の現場ではこのインテロが、デモを兼ねて全面的に採用されていました。
一緒に視察したhiroさんが、この建築中の現場を見て、「夏期には壁からも湿度が侵入する。これでは除湿対策が大変だ」 と叫びました。
なぜなら、ドイツの仕様を踏襲した鎌倉の家は、外部下地から仕上げ材に至るまで、すべて透湿性の高い材料が採用されていたから。
夏期が乾期のドイツだと、空気がカラカラに乾燥しているので何一つ問題が起きない。
しかし、夏期が雨期の日本では、換気以外に外壁からの湿気の侵入を考えねばならず、その除湿対策は大変なことになります。
そこで、工学博士であるインテロのMoll社長にメールで質問状を提出し、解答をもらいました。丁寧なその解答書には、「外壁側にOSB並みの透湿抵抗値のある素材の存在が必要だ」 という内容が書いてありました。日本で使うなら、グリーン・エコの使い方がベターだということ。
つまり、日本では耐震性を最重視して、外壁に合板ないしはOSBを採用する方が、湿度の過剰な侵入を防ぐという面からも正しい選択。

さて、ここで石油を原料とするEPSやウレタンなどの断熱材をどう考えるかという問題に直面せざるを得ません。
これは、なかなか厄介な問題。
ドイツなどでは再生可能ということで、もっぱら木の繊維とか、セルロースファイバー、羊毛、あるいは中空で湿度を通すブロックなどのエコ系に限るべきだというエコ論者が多い。
そして、プラスチック系ばかりではなく、グラスウール系すら排除することが素晴らしいことだという考えが一部では根強い。
それなのに、ドイツではPVCサッシの普及は世界のトップクラス。RC造の断熱改修に使っている外断熱用のEPSの使用量も世界一。
一部の人の言うことだけを盲信することは出来ません。

石油を燃料や肥料として使うことは、20年から30年後には絶対に止めざるを得ないでしょう。
そして、薬品、医療品、PVCサッシ、塩ビ管などの用途に限定して使ってゆくべき。
ただ、その中にEPSやウレタンの断熱材までを含めてゆくかどうかという判断。
これは、国連などで決議されてゆくものなのか、あるいは消費者とか、業界が決めてゆくものなのか?

べバーバリア施工に馴れていない関東以西の地場ビルダーにとって、簡単に、ある水準以上の断熱性能と気密性が得られる充填断熱材に、ウレタンの現場発泡があります。
専門工事業者が、下地処理から気密測定までの一切をやってくれる場合も・・・。
この工法が優れているのは、専門業者がきちんと施工すればほとんど結露の心配がないこと。
ただし絶対的条件があります。
それは、木材の乾燥がしっかりなされていること。
木材の収縮によって、木材とウレタンの肌別れが起こるようでは、性能は保障されない。
206のKD材(キルンドライによる人乾材) を使っておれば問題がない。しかし地場の未乾燥材を使っている木軸には、絶対に奨められません。
そして解体した時は、産業廃棄物として燃すしか方法がないことを判っていなければなりません。

このウレタンの現場発泡にしろ、工場で発泡されたパネルにしろ、外壁に合板などの面材が使われている充填断熱式であれば、その外側に外断熱を施工することはいたって簡単。
しかも、類焼の心配がなければ、外断熱に何を使っても許されます。
壁内に隙間がなく、結露の心配がないというのがなんとも嬉しい。

最近、ウレタンよりも性能が良いというので、外断熱にEPSを使い、ついでに充填断熱にもEPSを使う例が出てきています。その代表がi-cube。
i-cubeの充填断熱材に使われているEPSは、単に隙間に詰め込まれているのではありません。交互に切り込みがあって、圧縮して入れられており、壁内で膨張。このため壁内の空隙は皆無。
したがって、壁内結露はありません。
一部のビルダーで、EPSをカットしただけで充填しているものを見かけることがありますが、これはいただけません。

EPS、ネオマ、キューワンなどを外断熱として使用する場合は、原則として縦胴縁を用いて通気層をとり、サイデング仕上げが多い。防火認定を取っておれば、これがスタンダード。
しかし、縦胴縁を使う場合は、クギの保持力から言って、それほど厚い断熱材は使えません。厚さは40mmから50mmが限度。それ以上だと、直下型の震度7には耐えられない。
それと、もう一つ問題になるのが、木軸の場合の間柱の見付け面積。
206の場合は38mm以下ということはあり得ません。
だが、木軸の場合は1寸もあれば御の字で、中には9分とか8分というものが多い。縦胴縁を支える構造体としては不十分。
ただし、私の近所で見たタマホームの間柱は、含水率は11%で、断面寸法は120mmX45mm。今まで見た木軸の中ではベスト。例外中の例外と言うべき。

間柱の見付け面積が36mm以上あれば、KMブラケットを使い100mm厚の外断熱を用いることが出来、仕上げ材として重いタイルや石を使うことも可能。
耐震性ということを考えた場合、外断熱用の下地処理材として最も信頼できるのがKMブラケット。
しかし、206材では文句なく使えるけれども、木軸の場合はタマホームなどの一部を除いて採用が難しいと考えるべき。
つまり、プラス100mm以上の外断熱を求めるのは、直下型の地震が考えられる地域では、現時点では不可能に近いと考えられます。

次は防火。
この面では、文句なしに推薦出来るのがロックウール。
北海道では、ガルバニウム仕上げが目立つようになってきたこともあって、防火の面から主力はロックウールになってきています。
最近は、沈下しにくいという特性を買って充填断熱にも吹き込みロックウールが多用されてきているようです。
それと、ロックウールを使った場合は、充填断熱材の種類に関係なく結露が起こりにくいという利点があります。べバーバリアさえしっかり施工してあれば・・・。

それと、もう1つ注目されるのがロックウールによる軽量モルタル仕上げという湿式工法の登場。
ドイツではRC造の断熱改修に用いられている断熱材の82%がEPSで、ロックウールが15%、その他が3%。(2008年5月25日付けの「ドイツのRC造の断熱改修」を参照。ただし、個人的な意見ですが、階上への類焼防止という意味から、開口部上部には不燃のロックウールの採用が日本では不可欠の条件と考えます)
これに対して、木造住宅ではその比率は判りませんが、木繊維ボード、ロックウール、EPSが採用されています。これも、個人的な意見ですが防火の面から私はロックウールに軍配をあげます。しかし、エコボードなどの木繊維も日本で、50mm厚で防火認定を取っており、熱伝導率は0.4Wですが、プラス外断熱材の有力な候補の1つとして挙げられます。

これらは、ドイツから輸入されたものが多く、北洲の標準仕様のA1は、その中のアルセコのロックウール80mm厚を標準仕様として採用しています。
施工は、構造駆体の外壁表面にべったり接着剤を塗り、80mmの硬い断熱材を貼り付ける。
そのロックウールの上に薄くベースコートを塗り、ガラス繊維のメッシュを敷き、更にベースコートを薄く塗る。
乾いたら、トップコートを塗って多彩な塗装仕上げ。
この施工方法は、木繊維の場合も、EPSの場合も基本的に同じ。

「湿式のモルタル仕上げ」 と呼称していますが、いずれのコートも薄くてしかも軽い。構造体に負担をかけないというメリットは大きく評価出来ますが、薄くて軽い分だけ防火性に劣る。
そして、ガラス繊維のメッシュに守られているので、野球の硬式ボールが当たっても凹むことはまずない。しかも、いずれも透湿性が高く、通気層がなくても下地が腐ったりはしない。
ということで、新築住宅もさることながら、断熱改修用に最適と言えるシステム。

P1020231.JPG

ドイツでは断熱改修と言えば、この湿式工法による外断熱が圧倒的。
日本ではまだまだまだ馴染みが薄い新参者。
私も一年以上前から資料は見ていますが、自分で採用したことも、実際の工事に立ち会った経験もありません。また価格面でも、突っ込んで調べたことがありません。
したがって確言は出来ませんが、断熱改修工事の切り札になってくる可能性が非常に高いように感じています。

(今日、仲間と会ってプラス外断熱の議論をしていたら、外断熱としての木繊維のことを忘れていたことに気付きました。急いで追加訂正をしたところ)


posted by unohideo at 16:45| Comment(0) | 技術・商品情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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