2010年02月20日

ハウスオブザイヤー2009 どうしても気になるルーチェの大賞!



ハウスオブザイヤー・イン・エレクトリックの第1回、第2回の大賞は、若干疑問はありましたが納得出来るものでした。
しかし、今度の第3回(2009年)の新聞発表の大賞を見た多くの人々から、「正直いって納得出来ない」 という意見が寄せられていました。
私もその一人でしたが、発表会の報告を聞いてからでないとうかつなことは言えないと、言葉を控えてきました。

まず、坂本先生の講評で、1、2回の時は「暖房・冷房・換気・給湯」の外皮と設備で評価してきたが、第3回からは、「暖房・冷房・換気・給湯」にプラスして「照明・太陽光」を含めて評価するように、評価方法が変わったことを知りました。
昨年4月から、大手の分譲業者を対象にしたトップランナー方式を国交省では採用しています。そのトップランナー方式の評価基準に準じて照明と太陽光を加えたとのこと。
このトップランナー方式の詳細は、一昨年暮れに発表された下記URLの資料1-1、1-2、1-3、1-4-1、1-4-2を参照して下さい。
http://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/house04_sg_000011.html

この計算式は面倒に見えますが、次世代省エネ住宅仕様の基準プランの一次エネルギー消費量が50.9GJだから、それから10%削減した45.8GJ以下であげなさいという非常に単純なもの。

P1020317.JPG

トップランナー方式というと、その言葉から凄い内容を連想します。
たしかにT、U地域のQ値が1.4W。V、W、X地域は1.9Wというから一歩前進という気はしますが、太陽光2kWを搭載すれば黙っていても10%は削減出来ます。
したがって、このトップランナー方式というのは、住宅の省エネ化を進めるというよりも、CO2削減のためにエコキュートとか太陽光の普及促進を狙った方式だと言えます。
そして、それは一部プレハブメーカーの願望と一致します。

世界各国は、如何にエネルギーを使わない住宅をつくるかで懸命の努力をしています。
ところが、日本ではエネルギー消費量の少なさを競うのではなく、太陽光発電で消費量の多さを如何にカバーするかという競争に持ち込もうと、やっきになっているという気がします。
太陽光発電そのものを否定する気は毛頭ありません。
ただ、ハウスオブザヤー・イン・エレクトリックが、太陽光発電を表彰する形になるのでは、それこそ本末転倒と考えるからです。
やはり、どこまでも暖房・冷房・換気・給湯が基本で、これに新しく照明を加えるのはよいでしょう。
しかし太陽光発電は、いくらでもオプションとして付け加えることが出来るのですから、あくまでも評価外の一定の数値にとどめておくべきではないでしょうか。
といっても、トップランナー方式に準じて評価されるわけですから、これからの応募作品には、太陽光が絶対条件になってきました。

さて、今年の大賞。
まず、青森の日野建ホーム。
同社は1987年に「FPの家」を導入し、93年にはツーバイフォーFPで3階建てモデルを建てるなど青森地域における高気密高断熱住宅では先導的な役割を果たしています。
東北電力と協力していち早く太陽光を導入したほか、オール電化、エコキュート、ヒートポンプによる温水暖房システムを採用するなど、地場ビルダーとしては輝かしい実績をあげてきています。
そしてカタログによると、2008年時点でFPの家の完工実績が800戸、うちオール電化330戸、太陽光発電搭載93戸という成績を積んでいるというからお見事。現時点で展示場は青森に3ヶ所と仙台に1ヶ所。

大賞を授賞した住宅のU地域の性能は、天井は吹き込みセルローズファイバー300mm、外壁・床は硬質ウレタン105mm、窓のU値は2.33W、η値は0.62、ドアは2.33W。
Q値は1.26W、μは0.04。
暖房はヒートポンプ温水パネルラジエーター。冷房はエアコン。給湯はエコキュート。換気はダクト式1種(熱交あり)というもの。
太陽光は3.2kW。
性能的にはR-2000住宅とほぼ変わらず、こうした住宅をコンスタントに提供してきたという実績は高く評価出来ます。
しかし、この程度の性能住宅は、全国のR-2000住宅仲間がコンスタントに提供してきているもので、昨年までだとこの仕様で応募しても特別賞しかもらえなかった。
今年は優れた応募作品が少なかったことが幸いした、という面があります。

これよりはるかに優れた性能住宅を提供している北海道や内地のビルダーの皆さん。
何しろ「イン・エレクトリック」ですから、オール電化とエコキュートは不可欠。
それに、LED照明を加え、オプションで太陽光発電を搭載しなければならなくなりました。
それをつければ、過去30年以上にわたる実績が評価され、ハウスオブザイヤー2010の大賞は、貴社のものになる確率が高いのです。
R-2000仕様ではなく、一歩進んだもので是非応募しょうではありませんか!

さて、問題はルーチェ。
トステムは工務店のフランチャイズ・チェーンで、先導的な役割を果たしてきました。
歴史的役割を果たしたお馴染みのアイフルホーム。
フランチャイズですから入会出来る会員社が百数十社に限られます。申込みが殺到し、多くの工務店があぶれました。
そのあぶれた工務店リストを持って独立したのがユニバーサルホームだと言われています。真偽のほどはわかりませんが…。
このため、トステムはあわてていくつかのチェーンを立ち上げ、資力と技術力、営業力のない工務店を支援してきました。
しかし、この数年来の住宅不況で申込みが減り、08年4月にそれまであったフライトホーム、ゴーイングホーム、ワンダーホームの3社を合併したのがフィアスホーム。
トステム住宅研究所の傘下にあるのは、現在はアイフル、ジーエル、フィアスの3社になりました。
この外にトステム本部の事業として、高性能住宅工法事業があります。ここでスーパーウォールと206のスーパーシェルを扱っています。これはボランタリー・チェーンとして運営。

ジーエルホームとスーパーシェルはツーバィフォー工法ですが、その他は木軸面工法。
基本になっているのがスーパーウォール。
集成材の金物工法で、柱と柱の間にOSBに65mmの断熱材を貼った面材を取り付けてゆく。サッシはアルプラのペアで、残念ながらFPの家よりも性能が落ちます。
トステムグループで一番性能面で優れているのがR-2000住宅仕様の206スーパーシェル。
これは昨年、特別賞をとっています。

このほど大賞をとったのがフィアスホームのルーチェ。
このルーチェのカタログは、ちょっとひどい。
外観写真は、三菱の電気自動車ともどもCGで製作されています。
実物の完成写真ではありません。
そして、高気密高断熱を謳いながら、C値での気密性能の表示がない。
Q値での熱損失係数の表示も見られない。
開口部の写真は、その断面形状から見てアルプラのペア。そして熱貫流率のU値も、μ値の表現もありません。
LED照明の採用も謳っていません。
こんな住宅が、どうしてハウスオブザイヤー大賞を受賞出来たのだろうかと、疑問が浮かんできます。

坂本先生の発表された同社のW地域の仕様を見ておやと思い、各社の比較性能値を見てびっくりさせられました。
断熱はいずれも押出ポリスチレンで、天井120mm、外壁65mm、床60mm。次世代住宅の基準にギリギリセーフ。
ところがサッシは、カタログに出ているアルプラの2.33Wではなく、どうしたわけか1.03Wという超高性能な数値になっていました。
専門委員に確かめてもらったら、工事用の図面で検討した時、補助資材を含めて1.03Wの性能が間違いなく確保されていたそうです。
おそらく、トステムのPVCの最高のサッシにダブルハニカムか何かを使ったのだと思います。η値は0.32。
暖冷房はエアコン。
換気は壁付きファンによる1種で、熱回収はなし。
したがって、1.03Wのサッシを使いながらもQ値は1.73Wでμ値は0.048。
驚くほどの数値ではなく、いたって平凡なものです。

しかし、各社の性能比較表を見ますと、応募した39社の中でルーチェがダントツの数値を示しています。(青い線がフィアスホームで、濃い紫が日野建ホーム)

P1020322.JPG

熱回収換気さえ採用していないルーチェ。
サッシ回りを標準仕様から大幅に改善し、カタログに謳っていないLED照明を採用し、太陽光を搭載しただけで、これだけの数値が得られるとしたら、全国の仲間は今まで何をしていたのかと反省しなければなりません。

少なくとも授賞作品に、「ニュー・ルーチェ」とか「ルーチェU」という商品名がついていたのなら話がわかります。
古いルーチェの仕様を変更し、新しい仕様を用意したのだと納得出来ます。
昔の名前のままだという点が、カタログを見れば見るほど気になります。


posted by unohideo at 16:45| Comment(0) | 技術・商品情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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