2010年02月25日

「ジェントルマンシップ」がハウスオブザイヤーの基本精神



ハウスオブザイヤーに対するいくつかの質問を、メールと電話でいただきましたので、まとめて返事を書きます。

まず、ハウスオブザイヤーは、何を基準に審査されているか、です。
今回からは、視点1の外皮と設備(冷暖房・換気・給湯)に照明と太陽光が加わったことは、すでにお分かりいただけたと思います。

◆審査される4つの視点
・視点1  外皮と設備の総合的省エネ性+今回から照明・太陽光
・視点2  上記は数値で表現されるが、それ以外の工夫と先進性
・視点3  快適性、安全性、耐久性、利便性と品質保証とのバランス
・視点4  コストパフォーマンスと実際にどれだけ普及しているか(施工実績の多寡)

この4つの視点の中で、視点1が最優先で評定されます。
しかし、いくら優れた性能の住宅であっても、それが試作棟の段階にすぎなかったり、完工実績の乏しいもの。あるいは価格が高すぎるものは評価されません。
つまり、視点4も非常に重視されるポイント。
昨年の第2回でパナホームのオール電化住宅が大賞に選ばれたのは、宿泊体験という優れたシステムを考案し、数万戸を売ったコストパフォーマンスと普及性が高く評価されたからです。

さて、この施工実績です。
大手メーカーの新商品では、累積実績で最低20戸とか40戸以上ということになると思われます。
しかし、年間30戸しかこなしていない地場ビルダーに20戸とか40戸といわれてもとてもムリ。しかし大賞を取るには最低で3〜4戸の実績が必要だと思います。
年間10戸の地場ビルダーの場合は2戸程度の実績が必要。1戸のモデルハウスだけでは試作棟にすぎません。
そして実測データを揃えていないと、本来は大賞を授賞する資格がないのだと思います。

◆コストと普及性は自己申告制
当該住宅の省エネ性能は、カタログを見れば大体分かります。
Q値、U値、C値、η値、μ値が示してあれば、あるいは断面形状が表示してあれば、そして採用している設備機器が明示してあれば、間違いなく判断出来ます。
しかし、新商品のコストパフォーマンスとか施工実績は、カタログでは分かりません。

そこで、ハウスオブザイヤー表彰委員会がとった最大の特徴は、「各社の紳士的な自己申請に委ねる」というものでした。
伊藤 滋委員長は、この表彰制度の発足に当たり「ハウスオブザイヤーは、各社の良識と良心にしたがった自己申請制の、ジェントルマンシップで行きます。この方が、新しいトライが出来、イノベーションが進むと思うからです」とその趣旨を説明しました。
これは、勇気ある決断だったと思います。

たしかに、特別賞とか優秀賞までは、ある程度自己申請制で良いと思います。
しかし、大賞となると、この自己申請性だけではムリだという問題が、昨年から発生してきました。
大賞候補は、やはり当該住宅の実測データや、何戸かの施工写真などの提出を求め、施工現場を確認する必要があると思います。

第1回の一条工務店とスウェーデンハウスの大賞は何も問題がありませんでした。
第2回のパナホームも問題ありませんでした。だが、サンワホームは施工実績という面で大きな疑問が感じられました。
といいますのは、同社の売上げが落ちていて苦しいという噂が当時から業界をかけ巡っていました。そして、売り上げ不振を打破するために、「無暖房住宅のセミナー」をやたら開催していた。
そして、ホームページには、無暖房住宅の工事中の写真と完成現場の写真が載っていないのに、入居者の談話のみが数点紹介されていました。あまりの不自然さに、私どもの仲間だけでなくほとんどの関係者が眉唾ものだと感じていました。

同社は昨年2月にハウスオブザイヤー大賞を得ました。
だが、担当部長の挨拶の中には実績を感じられる話が何一つありませんでした。
そして、秋には会社更生法を申請。
ハウスオブザイャー大賞をとった会社が、その年内に倒産というみっともなさ。
表彰制度にとって、この上にない不名誉な出来事です。
ジェントルマンシップが、土足で踏みにじられました。
つまり、大賞授賞対象社に対しては、紳士的な自己申請制だけではなく、厳しい実績調査が必要だということではないでしょうか。

◆フィアスホームのルーチェの疑問点
次はルーチェの疑問点。
フィアスホームのホームページを見ると、新商品としてルーチェが誕生したのが昨2009年4月15日だということが分かります。
この時に作成されたカタログはCGで作成されています。
モデル棟もないようです。
そして、Q値もU値もC値もμ値も書かれていません。
LED照明の採用のことも、何一つ触れていません。
ただ、太陽光が最大5.85kWの搭載が可能だと書いてあるだけ。
外壁の断熱厚は押出ポリスチレン65mm。
サッシはアルプラのダブルのLow-Eで、U値は2.33W。
換気は壁付きフアンで、熱交換なし。

このカタログだけでは正確な性能が分からないので、フィアスホームの他の商品の性能値を調べてみました。
ホームページに掲載されている性能では、アリエッタの場合でQ値が2.29W、μ値が0.48。そしてC値が1.0cm2/uとあります。
おそらくこれと同程度の性能住宅として、10ヶ月前にルーチェが開発されたはず。
そして私の推定では、次世代省エネ基準に過ぎないルーチェですが、昨年中に完成したのは最大限で20戸弱だったと推定します。テレビ宣伝でもやらないかぎり、それ以上に普及するわけがありません。

さて、このルーチェが、どんなはずみでハウスオブザイヤー大賞になったのか? という問題です。
これからは、どこまでも私の想像です。こんな想像をするしか納得出来る答が見当たらないことを分かってください。

まず、フィアスホームの責任者が、ハウスオブザイャー審査の専門委員のところに行って、相談をしたのだと思います。
「トステムでは、今までハウスオブザイヤーの特別賞をとっている。フィアスホームとしても是非とも特別賞をとりたい。といっても、現在開発中の商品はない。今年の春に開発したルーチェを改良して応募したい。一体どこをどう改良したらよいか、お知恵を拝借したい」と。
言われた専門委員は、Q値2.29Wのカタログを見て呆れた。
「こんなものでは特別賞どころか、優秀賞をとるのがやっと。断熱も換気も他の商品との関係で標準仕様を変えることが出来ないのでしょう。とするとサッシを変えて、LED照明を採用する以外に方法がありません。それをルーチェUと称してカタログを作り、試行建設を行い、データをとって少なくとも10戸の実績を積んでから応募するしかありませんね」

ところが、この専門委員の意見が正しく伝えられず、フィアスホームはルーチェのサッシ回りと照明だけを変え、商品名もルーチェUと変えず、カタログも古いのが沢山残っているからもったいないとそのままで、一部仕様を変更しただけで応募した。
施工実績は、最初は100戸弱と書いたが、あまりの作文に気がとがめ、後に60数戸に変更しています。
これで、特別賞さえとれれば御の字と考えていたはず。
問われている施工実績は、次世代省エネ基準のルーチェではありません。開口部U値が1.03Wの新ルーチェの施工実績。

ところが、なんと作文の数値がそのまま評価されてハウスオブザイヤー大賞になってしまった。
嬉しいと喜ぶよりは、新しいカタログの作成も間に合わず、恣意的な行為が透けて見え、バレバレ状態になので大困惑。だが、いまさら引くに引けない。
こうなれば、単なる作文でないとシラを切って押し通すしかない。
こうして、不本意ながらも「省エネ偽装事件」と言えるような事態が発生したのだと思います。
発表会当日のフィアスホームのプレジデントの授賞挨拶は、サンワホームのそれよりも空虚で、本当に内容のない白々しいものでした。


私の想像が空絵事であることを、心から祈ります。
そして、フィアスホームは、U値1.03Wのサッシを取り付けた完成現場を、最低5ヶ所で良いから直ぐに公表して欲しい。
それを見せてもらえば、私はただちに非を改めてフィアスホーム礼讃論を書きます。

もし万が一、私の想像が当たっていたら、フィアスホームはジェントルマンシップにのっとって、ハウスオブザイヤー大賞を返上した方がベター。
それこそが、潮田健次郎イズムのはず。
CSR(企業の社会的責任)の基本です。


posted by unohideo at 10:08| Comment(0) | 技術・商品情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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