2010年03月04日

石油の次はマグネシウムだという画期的研究? or 大ボラ?(上)


矢部孝談、山路達也著「マグネシウム文明論」(PHP新書 720円+税)

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大ボラというか、それとも画期的な研究というべきか…。

ともかく、現時点では世界的に認知された科学ではない。
しかし、いろんな実験でそれなりの成果を上げてきている…。
石油の次のエネルギーは、水素でもなければ核融合でもない。
今まで聞いたことのないマグネシウムだというから、びっくりさせられる。
この著書は、東工大矢部孝教授の口述をフリーのテクニカルライター山路氏がまとめたもの。
なんだか眉唾の気はするが、だからといって無視することが出来ない内容を持っている。

15年も前のこと。
TBSブリタニカ刊「メルセデス・ベンツに乗るということ」という本を読み、燃料電池の世界が間近に迫っているように感じさせられた。
そこで某住宅関連メーカーの工博と技術部長との三人で、著者の一人である金谷年展氏を訪ねて燃料電池の近未来像を聞いたことがある。
そしたら、燃料電池車時代がすぐそこにまで来ているような話。
すっかりその気にさせられ、ある商品開発を進めたが不発に…。
現在では、燃料電池の時代はかなり遠い先のことだと言われている。
これは、触媒に使う白金のために高コストになるからでも、電解の技術がむずかしいからでもない。
水素は貯蔵や運搬が難しいという単純な理由。
たとえばガソリンスタンドの10m3のタンクだと200台の乗用車を満タンに出来る。
だが、同じエネルギーを1気圧の水素で貯蔵すると3300倍のタンクを必要とする。
圧力をかけて容量を少なくすればするほど爆発の危険が増大。
ということで、あれほど騒がれた燃料電池車は夢物語化しつつある。
それと同じような先物買いになるのかもしれない。
しかし、このマグネシウム文明論にはロマンがある。
世界の誰もが言っていないだけに先駆性がある。
藻からバイオエネルギーを創り出すというのと同程度の可能性が考えられる。
ということで暫くの間、夢物語に付き合っていただきたいと思う。

私たちに馴染みのあるマグネシウムというと、豆腐をつくる際に使われる「にがり」、すなわち塩化マグネシウムがある。
単体のマグネシウムは銀白色をした軽い金属。この合金は強度があり軽いために携帯電話やパソコンのボディ、自動車や飛行機の部品として使われている。
若い人は知らないかもしれないが、20年ぐらい前までは記念写真を撮る時に、フラッシュとして粉末のマグネシウムが焚かれていた。
つまり燃料的な使い方がなされてきた。
燃料として見た場合、マグネシウムは理想的な物質。
石油の熱量は44MJ/kg、石炭は30MJ/kgに対して、マグネシウムはこれよりやや劣るが25MJ/kgで、木材などよりはるかに高い。
しかも石炭のようにCO2や硫黄酸化物を発生させない。
しからば、なぜマグネシウムは燃料として使われないのか?
その理由はいたって簡単。
価格が300円/kg程度と高いから。

このマグネシウムの価格が150円/kgを切るようになると、まず自動車の燃料がガソリンからマグネシウムに変わる。
次は発電所などでも化石燃料に依存しなくても良い社会が来ると口述者は力説している。
価格を安くするには、画期的なイノベーションが必要。
まず、原料としてのマグネシウムを現在のように地殻の中に埋蔵しているものに求めるのではなく、海水の中に求める。
そして、その製錬には太陽エネルギーを用いると言っている。
太陽エネルギーというと太陽光発電、ないしは太陽熱を連想するが、そうではなく太陽光を直接レーザーに変換する「太陽光励起レーザー」という新しい技術を用いるという。
それだけではない。
マグネシウムを燃料として燃やすと酸化マグネシウムが生成される。
その酸化マグネシウムをレーザーで製錬すれば金属マグネシウムに戻り、再び燃料として使える。
マグネシウムのリサイクル社会が出来る。
その実用化寸前の段階にまで来ているという。

ここまで断言されると、その細部技術の進捗状況が知りたくなってきます。


posted by unohideo at 10:10| Comment(2) | 技術・商品情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
マグネシウムをそのままシリンダーに入れて燃やすわけにはいかないので,(高熱でシリンダーが溶けてしまうし,焼きついてしまうでしょう)多分,水と反応させて水素を作るということでしょうか。
そして,その水素を燃やすか,あるいは燃料電池の燃料として使うことになるでしょうかね。
酸化マグネシウムを還元するのにどれくらいのエネルギーが必要なのか。
直感的には夢かなと思いました。
Posted by at 2010年03月04日 14:17
Mg還元のエネルギー源となる太陽光励起レーザー次第ですね
Posted by at 2011年03月29日 18:43
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