NPO法人・北海道住宅の会(林芳男理事長)は、十勝ツーバイフォー協会(赤坂正会長)や地元丸十木材などの全面的な協力を得て、100%道産材による206のモデル棟を建築中で、間もなく一般公開される。
東大・安藤直人先生の言葉通り、現在は「木造建築にはものすごいフォローの風が吹いている」のは間違いのない事実。
ともかく学校、病院、保育所、擁護施設など、「低層の非住宅建築は100%木造にすべし」という政策が打ち出されている。
もちろん、十分な耐震、防火、省エネ対策を行った上でのこと。
しかし、多くの地場ビルダーは、「この追い風を活用するだけの企画力に欠けている」という指摘があるのも事実。
そして、都道府県て単位では「地産地消」ということで、地場産材の採用に補助金を出しているところも目立ってきている。
まさに隔世の感があるが、ビルダーや消費者にとっては地産地消は必ずしも喜ばしいことばかりではない。
必要なことは、十分に乾燥され、一定の精度と性能が保障されたランバーが、必要な時に、必要なロットで入手出来るかどうか。
たとえば、安い柱材だけがいくらあっても意味がない。大きな集成梁や、時には門型構造も必要になってくる。
つまり、総合的に国際競争力を持った製材業が地場に育ってくれないと、ビルダーも消費者も困る。
なかでも、困っているのがツーバイフォーの地場ビルダー。
北海道では新得町の関木材が早くから204材、206材を供給してくれていた。
しかし、横架材の208、210、212材が同時に供給されないと、仕事にならない。
別送便で現場へ搬入されても、余分な手間暇がかかるだけ。
こうした悩みを解消するステップにしょうというのが、今回の林野庁助成事業の「ツーバイフォー工法に必要なすべての構造材を、道の業者の手で、道産材で揃えよう」という試み。
構造材のスタッドは、内壁は204材で外壁は206材。
今まで、関木材が用いていた樹種はトドマツ。
トドマツは39%が建築用に出荷されている。
これに対してカラマツはパレット材、梱包材が主力。建築用はたったの6%でしかなかった。
そのカラマツで、今回204材と206材を生産したのが幕別町のオムニス林業協組。
そして、JAS甲種基準による仕分けと、打音と一部破壊による強度試験を行っている。
その結果、ヤング係数はSPFよりも優れていることが証明されたという。
つまり、カラマツは、建築用としては合板や集成材用だけでなく、スタッド材としての有効性が確認されたというわけ。
ただ、構造材としての経年変化による問題点の有無については、これからモデル棟で検証されてゆくことになる。
今回のモデル棟は、一般的な住宅とは内容が異なる。
どこまでも、道産材による構造材に焦点が当てられている。
施主の丸十木材は、一階を土間床にして全体を車庫として使用する。
中に背の高い車があるので、一階の天井を高くしている。
206で、3メートル近いハイスタッドにカラマツが使われている。
それと、屋根トラスに204と206材が使われている。
一方、二階のスタッドには関木材のトドマツが採用されている。
なお、二階の床は、スパン2間の部分には久保木工のI型ジョイストが採用されている。
このI型ジョイストのフランジはトドマツで、ウェブはカラマツ合板。
I型ジョイストには203材を縦使いしているメーカー品が出回っているが、久保木工は204材を横使い。
このため、材積が多くかかるので割高だが、作業性はすこぶるよい。
そして、スパンが4間の部分はカラマツの集成梁を910ピッチに入れ、丸玉産業のカラマツ構造用合板を用いている。
その2つの収まり具合が一見できるようになっている。
なお、側根太、端根太には、試作品のカラマツのLVLが用いられている。
そして、開口部は久保木工のトドマツ集成材によるウッドサッシ。
このモデル棟は、そうしたカラマツやトドマツの構造躯体を見せることが目的。
このため、充填断熱材も入れられなければ石膏ボードも張られない。
もちろん、仕上げもない。
そして、どこまでも外断熱だけ。
つまり、このモデル棟は断熱性能とか気密性能を問うものではない。すべて道産材で、ここまでエンジニアリング出来ますという見本。
問題は価格。
残念ながら試作段階のものが多く、量産体制も整っていない。
このため、円高ということもあって、輸入の構造用材に比べると現時点では50%から100%高だという。
山にいる森林価格は安くても、搬出や製材・加工に至る工業化の遅れが、大きく影響していることがよくわかる。
しかし、北海道でツーバイフォーのエンジニアリングが成功しないと、他県での成功は考えられない。
そういった面で、NPO法人北海道住宅の会と十勝ツーバイフォー協会が、協同で「オール道産材ツーバイフォー住宅」の長期優良住宅60棟の申し込みをした。
その結果が待ち望まれている。
200万円の補助金が出れば、価格差は完全に克服できる。
そして、次第に量産体制が整備されてゆけば、国際的な競争力も付いてこよう。
新しいトライが、帯広で始まった。