新築住宅やリフォーム工事に対して、最大30万円のエコポイントが与えられることは誰でも知っている。
そして、家電の量販店で、断熱改修用のインナーサッシの取り扱いを始める業者が出現してきているというニュースも・・・。
家電のエコポイントに味をしめた量販店が、30万ポイントの住宅エコポイントに食指を伸ばしたという事情は理解出来る。
しかし、住宅の断熱改修工事というのは、そんな甘いものであってはならない。
性能を確かめずに、やたらと税金をバラまいてはならない。
断熱改修には、何はさておいても現在の住宅の、「省エネ性能の評価と表示」 が必要。
この住宅の省エネ性能は平方メートル当たり年間何kWhなのか。
EU各国が、一昨年から始めたのが 「全建築物の省エネ性能の表示の義務化」。
これが持つ大きな意義については、今まで何度となく述べてきた。
しかし、建築界で大きな影響力を持つと考えられる村上周三氏、坂本雄三氏、村松秀一氏、吉野博氏などの各氏は、積極的に発言してくれない。
ここまで進んだ情報化社会。
各先生方にEUの動きが伝わっていない訳がない。
しかし、国交省住宅局が動かないので、諸先生方は諸般の事情から、動こうにも動けないのが現実ではないかと推測。
そこで、建築以外の小宮山宏氏、茅陽一氏、山本良一氏、米倉誠一郎氏などの諸先生方に、EUにおける省エネ性能表示制度の概略を書いた資料を送付し、ぜひともご協力をお願いしますと請願してきた。
しかし私のような者が、外野席からいくら働きかけても世の中は動かない。
やはり企業なり、業界団体の第一線で働いている方、あるいは住宅関係のジャーナリストが、信念を持って強力に働きかけていただかないと、日本は沈殿したまま。
EUは、ギリシャ問題でてんやわんや。
そのためか、画期的な建築物の省エネ性能表示制度のその後の進捗状況が、ほとんど伝わってきません。
里見さんと金子さんのグループが今春オーストリアのパッシブハウスの調査に出かけたので、その辺りの情報を楽しみに期待しているのだが、現時点ではなし。
私の知っている範囲では、森みわさんが4/24に書いた「環境省のロードマップ」ぐらいしか見当たらない。
http://keyarchitects.blog16.fc2.com/blog-entry-100.html
この中で、環境省は2012年までに住宅の燃費 (kWh) のラべリングの義務化を盛り込んだロードマップを提示していると書いています。
こうした情報発信を、もっともっと各住宅情報紙誌に求めたいのだが、得られるのは手垢のついたエコポイント程度で、いつもがっかり。
全建築物の省エネ性能表示の義務化が達成出来たら、次に打つ手はいくらでも用意出来ます。手段は無限にある。
私はあまり財政出動論者ではありませんが、子供手当に数兆円を投じるのなら、そのうちの1兆円を断熱改修工事費として計上すべき。
一戸当たり最低200万円を投じで断熱改修をさせる。
それも、年間燃費の達成目標を、冷暖房・換気・給湯・照明込みで、段階的にとりあえずは180kWh/m2とし、次第に150kWh/m2から130kWh/m2へと目標性能を上げてゆく。
そうした数値目標を達成した住宅にのみ200万円の補助金を与える。
その対象戸数を年間50万戸以上とする。
そして、少なくとも50年から70年をかけて、日本の既存の住宅全体の断熱改修工事を徹底的に推進してゆく。
これだと、太陽光発電のように、設置した者と設置しない者との格差は生じない。
もちろん新築住宅では、EUのように次第に高度な省エネ性能を義務づけてゆく。
2020年には、CO2の発生しない住宅でないと許可しない。
つまり、住宅を建てるには、「社会的な責務がある」 という形にする。
古い住宅の改修は、これは基本的には国を含めた双務義務とする。
日本における内需は、子供手当をいくら増加しても絶対に拡大しない。
私は決して少子化対策に反対しているのではない。
少子化対策としてはフランスを見習うべき。
そして、老人を寝たきりにしない北欧各国の政策導入なくして、医療費のいたずらな増大をセーブすることは出来ない。
そういった政策と同時に、EUの省エネ住宅政策のエキスを大胆に導入することが不可欠。
かなり荒っぽい提案だが、これを政策としてまとめ上げてゆくことが肝要。
それこそが、官僚と国会議員の仕事だと思う。
諸先生方も、もっと斬新な提案をしていただきたい。