前回は、壁一面に80ミリ厚の細長いロックウールを接着剤で横張りするところまでを紹介した。
そして、よく見たら軒裏などは接着剤が剥離しないように、特殊な部品で抑えていた。
次の仕事は出隅部のコーナービートの加工と取り付け。
このコーナービートにはグラス繊維のメッシュが付いているのが最大の特徴。
このように、開口部まわりなどに取り付けられる。
ベースコート用の樹脂。
水を加え、撹拌しながら粉を加えて硬さを調節。
そして、コーナービートを一旦外し、サッシの取り付け時に一緒に施工したメッシュの裏側へベースコートを塗って固定し、その上からコーナービートを重ねて下塗り。
こうして、サッシ回りをはじめとしたすべての出隅部がまず施工される。
そして、フラットな部分にもベースコートが塗られ、ガラス繊維のメッシュが施工されてさらに塗り固められてベースコートが完了する。
わかりにくいが、一面にメッシュの後が見える。
このメッシュが、ボールなどが当たっても、割れたり凹んだりするのを防止してくれる。
下塗りが乾くと上塗り。
防火認定をとっている上塗り用のアルシリトは、4ミリの骨材が入っている。
これを下塗りよりもやや硬めに撹拌する。
そして、短冊形のコテで壁に塗ってゆく。
その後を、もう一人がより広いコテで出隅や入隅をはじめとして、フラットな部分も均一になるように抑えてゆく。
この出隅部分で、下塗りと上塗りの樹脂の違いがよくわかる。
下塗り、上塗りとも透湿性を持っている。
このため、通気胴縁は一切必要としないのが特徴。
そして、壁全体の上塗りが進んでゆく。
乾式では得られない、一体的な味わいが出てくる。
この上塗りが乾燥したら、これまた透湿系の塗装で仕上げられるが、塗装の現場に立ち会うことは出来なかった。
塗装工事としては、特別に変わった点はないので、後ほど紹介する完成写真を見て想像していただきたい。
なお、この塗装は立地場所にもよるが、10年に1回程度は高圧洗浄した上で、重ね塗りをした方がベター。
問題は価格。
ドイツではこの工法が広く普及していて、職人さんの生産性は高い。
ベースレールの取り付けから始まり、断熱材の貼り付け、コーナービートの取り付けや下塗り、上塗り、塗装仕上げまで含めての人工が8人工/外壁m2という。
大宮モデルは外壁が200m2だから25人工というところ。
ところがモデルハウスということで凹凸が多く、開口部が多いということと、職人さんがなれていないということもあって、大宮の現場では3.3人工/m2でとどまっていた。
生産性は半分以下。
こうしたこともあって、同社ではこのプラス80ミリ外断熱と仕上げまでの一切を込みで客出し平均価格は1万3000円前後/m2としている。
206の充填断熱材を加えて外壁のU値は0.19Wと優れた数値。
内地ではほぼ最高値と言ってよかろう。
さて、この湿式外断熱工法は、どれだけの普及を見せるか・・・。
新しい挑戦は始まったばかり。